シノビ流ダンジョンのすゝめ
柊 凪
001.ダンジョンに初めて潜ってみた
:なんかヤバイパーティいるんだけど。パーティっていうか忍者? っぽいやつ。
:マジで? 誰? 確かに見たことないな。ちな今来た。
:いや、全然聞いたことないパーティ。全員見た目高校生か大学生っぽい。なのに新宿ダンジョン低階層だけどずっと無双してる。しかも初探索らしい。
:は? それ凄くね?
:いや、超安定感高いよ、俺C級だけどこんな動きできる気がしない。
:うぉっ、なんか黒尽くめのヤツの動きヤバイな。しかも魔法使ってる? スキル持ちかよ。動きが目で追えないんだけどマジかよ。
「前方から五、そこから少し遅れて左右から二ずつ。前方は俺がやるから左右のヤツは任せた」
「おう、右は任せろ」
「なら私は左をやるわ」
パーティメンバーの
そしてもう一人の
「私も出ちゃダメ?」
「梨沙は前にでないで、危なかったら回復掛けたり付与魔法使ったり、障壁で助けてあげて」
「うんっ、わかった」
実際梨沙の杖術の腕はかなりのものだ。持っているのは杖に魔石がついた魔法杖だが十分戦えるだろう。だが間違えて大怪我でもさせてしまえば十兵衛はお叱りを受けてしまう。どころか仕事に失敗した忍者として烙印を押されてしまう。
それでは護衛役失敗だ。なので、梨沙には消極的に戦闘に参加して貰っている。だが十兵衛の思惑とは別に梨沙は前に出たがっていた。
「火遁・〈劫火球〉」
ゴブリンライダー、ワイルドウルフに乗ったゴブリンの群れを火遁の術で焼き尽くす。大火球は爆発し、ゴブリンライダーたちは乗り手もワイルドウルフ共々炭と化して魔石を落とした。
(まぁこのあたりの階層なら俺一人でもなんとかなるな。他のパーティメンバーの腕も十分だし、この辺で満足してくれないかなぁ。……してくれないだろうなぁ。見立てでは多分十層くらいまではさくっと行けそうなパーティだし。パーティメンバーが優秀で悩むってなんだよ!)
十兵衛と梨沙は幼馴染だ。幼い頃から十兵衛は梨沙の護衛役だと言われて育ってきた。
だが現代、2030年にもなってまで護衛役と言うのはそうそう任務がある訳ではない。
北条家は北条グループと言う大企業を経営しているだけあって、自宅にも警備員がいるくらいで十兵衛に護衛役が回って来ることは今までなかった。
十兵衛が未成年だったと言うのもある。それもあって十兵衛と梨沙は今までは普通の仲が良い幼馴染の男女と言う感じだった。
しかし事情が変わった。梨沙に探索者の才能が有ることがわかり、更に有名探索者である梨沙の先輩が、梨沙は探索者になるべきだと力説し、梨沙も探索者になると決意してしまったのだ。
そして梨沙の父親、北条家当主、氏康様は十兵衛が護衛に付く事を条件に探索者になることを許可した。つまり十兵衛は自分の気持ち関係なく探索者にならざるを得なかったのだ。
ただやってみると案外面白いと言う事に十兵衛は気付き、嫌々やっている訳ではないのを実感してしまっている。
「右OK」
「左もなんとかなったよ」
「じゃぁ魔石を拾おう。ドロップはあった?」
「ウルフの牙があったよ。後は魔石だけだね。やっぱり五層くらいまで潜らないとドロップが渋いよね」
茜が魔石を拾いながら周囲を警戒しているのがわかる。
茜は十兵衛たちの一つ上の先輩で、既に探索者歴一年だと言う。そして前のパーティでは七層まで行ったらしいのだが、パーティ内恋愛の問題が勃発し、パーティが崩壊してしまった。そして新しいパーティを探して居たところ梨沙と組まないかと誘われたらしい。
「そうだな、やっぱり五層から初心者脱出って言われるからそこまでは行きたいな」
最澄が続ける。彼は高校生の頃から探索者をやっていて、探索者としては一番先輩だ。ただ年齢は同じである。最澄の盾捌きはしっかりしていて、安定して梨沙の守りを任せる事もできる。少なくとも五層までは余裕だ。
(いいパーティ、ではあるんだよな。バランスも良いし)
タンク、前衛、回復役、それに斥候と戦闘ができる十兵衛。魔法スキル持ちが居ないのが玉に瑕だが、魔法スキルに近い忍術を十兵衛が使えるので無理にパーティに入れる必要性は今のところはない。
少なくとも十層を超えるくらいまで潜らないと必要にならないだろう、と言うのは事前に調べたデータとダンジョンについての書籍やネットを漁って得た知識で判断した。そして五層時点では今まで調べたデータと知識、実際に戦って見た実感に齟齬は感じられない。
もっと潜れば違うのかもしれない、どんどんと足らない物は出てくるであろうし、このパーテイ、チーム・暁もまだ組んだばかりで連携などはまだまだだ。
「それにしても十兵衛くん、本当凄いね。五体のゴブリンライダー一発とかおかしいでしょ。上位の火魔法かと思っちゃうレベルなんだけど?」
「いや、俺のは忍術だから魔法とは違うっていうか……、ちょっと説明が難しい。俺もダンジョンの中で魔法と忍術がどう違うのかとかわからないし」
「そっか、初ダンジョンだって言ってたもんね。それにしては戦闘とか気配察知とか凄すぎて私はずっと驚きっぱなしなんだけど」
「俺も俺も。こんなに簡単に五層まで組んだばかりのパーティで行けるとは思わなかった」
茜と最澄が褒めてくれるが嬉しいとは思わない。十兵衛の役目は梨沙の護衛なのだ。ただパーティ内の連携がしっかりすれば梨沙の危険は減るのでこれからもこのパーティでの戦闘を続けて行こうとは思った。
少なくとも初めて一緒に戦闘して二人の動きは素人とはかけ離れているのは確認できた。
最澄は高校生時代から探索者をやっていた経験者だ。高校生はDランクまでしかランクが上がらないと言う縛りがあった為Dランクだが実力だけならもっと上だろうと思う。
茜もDランクではあるが、まだ一年しか潜っておらず、頻度も高くなかったと言う。刀と薙刀の実力は忍術を幼い頃から叩き込まれる風間の家でも通じるだろうほどの腕前だ。
ちなみに十兵衛と梨沙は初探索なので当然駆け出しであるEランクからスタートである。この場合パーティランクはDになる。潜れる階層は十階層までだ。
「ねぇ、あたしだけ全然活躍できないんだけどぉ」
「梨沙の能力が必要ってことは俺たちが危ないってことだ。それはもうダンジョン探索としては危険を冒してるから、梨沙は暇なのが一番いいんだよ」
「むぅ、でもちょっと過保護過ぎない。あたしだってもっとやれるよ?」
「わかってる。でも最澄も茜も安定して戦えてる今はまだ梨沙に頼る必要はないって事だよ。もっと深い階層に潜れば梨沙に頼る場面も出てくると思うよ」
「うぅ、十兵衛ちゃん達強すぎだよぉ」
:確かに! 黒尽くめの十兵衛くん強すぎ問題。しかも顔は出ててイケメンっていうね!
:モンスターの半分は一人で引き受けてるもんな。
:でも他のメンバーも強いぞ。このパーティ伸びしろしかないと俺は思う。
:あ、それは俺も思う。どこまで潜れるのか期待しちゃってるもん。
:ってか梨沙ちゃんと茜ちゃんが可愛すぎるんだけど。十兵衛くんも最澄くんも格好いいし見た目レベルも実力も高すぎない?
:わかる!
JDA・日本ダンジョン協会の規約でダンジョンに潜る時は魔石ドローンをつけることが義務付けられている。ドローンは球体に羽がついたような見た目をしていて、ふよふよと飛んでいて自動で追尾してくるようになっている。
それはダンジョン黎明期にダンジョン内での殺人などが横行したからだとダンジョン史の授業で習った事がある。
そしてドローンで撮られた動画はリアルタイムで配信することができる。アカウントは梨沙のアカウントであるが、梨沙はダンジョン配信もしたいと言ったのでこのダンジョン探索は配信されている。
サイトは専用のDチューブと言うサイトがあり、様々な配信者がそのサイトでダンジョン攻略配信などをしている。これは日本独自の文化ではなく、世界中で行われている文化だ。ダンジョン探索をやるならば常識と言って良い。
最初は十人、二十人程度だったが探索が進むにつれて増えて既に数百人の視聴者がいるようで、彼らは十兵衛たちの戦いを見て色々とコメントを打っている。
探索に役立つコメントなどはないが先輩探索者などもいるらしいのでそのうち良い情報源になるかもしれないなと思いながら十兵衛はコメントをオフにした。
「さぁ、今日は五層まで攻略して六層入口の転移球登録をしよう。そしたら終わりだ。もう少しだな」
「わかった」
「うんっ、頑張ろうね! でも一日で五層一気に攻略とか普通はできないからね?」
「十兵衛、私にももうちょい戦わせて! 経験が詰めないまま階層が進むのはイヤ!」
「わかった、次は梨沙も参加してくれ」
梨沙がパーティリーダーで登録されているチーム・暁ではあるが、三層まででお試しで陣形などを色々試した結果、十兵衛が音頭を取るようになっている。このままなし崩しでパーティリーダーをやらされそうな勢いだ。
(さて、このパーティ、と、言うかダンジョン探索どうなのかな。梨沙の安全は絶対だけど)
最初は護衛と言われてあまり乗り気でなかった十兵衛だったが、現代において忍術の使い道などそうそうない。だがダンジョン探索者としてなら十全に忍術を使うことができ、活躍することができる。
更にレベルアップやスキルオーブなどで実力を伸ばす事ができる。
パーティメンバーにも恵まれ、今はかなり良いペースで探索ができている。ちょっとだけダンジョン探索が楽しみになってきた十兵衛は先の索敵をしながらニヤリと口角を上げた。
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