路傍の石を磨いたら超絶美少女になった
3pu (旧名 睡眠が足りない人)
プロローグ
それはほんの気まぐれだった。
「どうか、……私達にお恵みを」
いつものようにふらっと訪れて、町をぶらついて、スラムの物乞いをしているガキに声をかけられた。
最初は無視しようと思った。
何故なら、このガキに飯や金を渡しても周りの同業との奪い合いになって、結局渡した意味が無くなるから。
このことを一度体験して身に染みて理解した俺は以降、声を掛けられてもずっと無視するようにしていた。
けれど、その日だけは足を止めてしまった。
別にガキの容姿が好みだったわけではない。
むしろ、最悪。
髪もボサボサで汚れていて、顔の至る所が煤汚れていて、所々焼け爛れ、腫れぶさっている。
手もガサガサで爪も伸びっぱなしで服もボロボロで、何より酷い汚臭で鼻が曲がりそうだった。
まず、間違いなく関わりたくない相手。
この世界では何処にでもいる路傍の石。
それなのに、この日は酒が入っていたからか妙に気分が良かった。
だからだろう。
「分かった。じゃあ、俺の泊まっている宿へ行くぞ」
こんなことを言ってしまったのは。
「「「へっ?」」」
どうせ奪われるのなら、奪われないように腹の中に詰めてやればいい。
幸いガキ三人に飯をいくら奢っても使いきれない程の金を持っていた俺は、気まぐれに施しをしてやることにしたのだ。
そして、固まるガキ達に浄化魔法と治癒魔法を使って綺麗にし、最低限宿に入れるように整えてから飯を奢ってやった。
「おいしいです……おいしいですぅ゛ぅ゛〜」
「うまっ、うまっ、うまっ、う゛ま゛っ゛」
「美味しい……はっ!ふんっ、まぁまぁね。その皿もよこしなさい」
「おお、食え食え。ガキは食うのが仕事だからな」
まぁ、長い間マトモな飯を食ってなかったんだ。
ポロポロ涙を流しながらガキ達は飯を食って、食いまくった。
その小さな体よく入るなと感心するくらいに。
まぁ、後に分かったんだが、治癒魔法が効き過ぎて胃の状態が正常になって、回復の際に使い過ぎたエネルギーを補給するためだったらしい。
が、それでも、やはり他人が美味そうに飯を食っているのは気分が良い。
結果。
俺は益々、興が乗り、酒をガンガン追加。
ベロンベロンに酔っ払った。
そして、あろうことか魔力も殆どないガキ達に向かって俺はこんなことを言ってしまった。
「よし、お前ら俺の助手になれ!」
正直スラムにいるガキなんかに見てくれや、俺の望む水準の魔法が使えるようになるなんてことは期待出来ない。
だが、正直治療の仕事を一人でやり続けるのに限界を感じていた俺は、『まぁ、ワイ、エルフだし試しにやってみんべっ』てノリで路傍の石共を助手として磨き上げることにした。
「えっと、私達なんかでいいのですか?その、私達文字も書けないですよ?」
「んっ。生活魔法も使えない」
「
この話を聞いたガキ共は訝しんだ。
当たり前だ。
こんな美味すぎる話がスラム街の住人にやってくるはずがない。
あっても詐欺か誘拐くらいだ。
が、ここで違うと言ってもどうせ信用されないし、言葉を尽くして説得するのも面倒くさい。
「単純に人手が欲しいんだよ。だから、助手にする。どうせ寝る場所にも明日食うのにも困ってんだろ?その状況から仕事が貰えるんだからいいだろ。いいよな?いいな!!?よしっ、はい、決定!明日からビシバシやるから覚悟しろよーー!」
「うひゃっ!?」
「っ!?」
「ちょっ!?ちょっと!?」
だから、俺は強引に話を終わらせ、新しく借りた隣の部屋にガキ共をぶち込み、呑気に助手の育成プランを考えるのだった。
まさか、数年後あんなことになるとはつゆ程も期待せずに。
あとがき
ノリとノリとノリで始めました。
よろっぷ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます