第13話 ミーティング
――1999年、5月某日。放課後の常総学園・学食。
夕陽が差し込む窓辺のテーブルに、小池強志と犬上利昭は腰を下ろしていた。
学食のざわめきから少し離れたその席には、冷めたカレー、二人分のアイスティー、そして開かれたスケッチブックが置かれていた。
スケッチブックには、丁寧な字でこう書かれている。
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【プロジェクトS】
目的:佐野、庄司、永瀬、野田に対する“無血制裁”。
制裁対象のプロフィール
佐野圭介:クラスの人気者を気取り、小池の家が部垂にあるとバカにする。通称“バカリーダー”。
庄司拓真:背後から小池の椅子を蹴る常習犯。
永瀬裕貴:部活の飲料を勝手に飲んだうえ、空ペットボトルを机に置く。
野田智弘:パソコン部室に落書きをした主犯格。強志の焼き印をネタに笑う。
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「復讐の条件は?」と犬上が聞く。
強志はカレーにスプーンを突き刺しながら、静かに答える。
「暴力じゃ意味がない。やり返したら“同じ穴のムジナ”になるだけ。
俺たちは……もっとスマートに、静かに、壊す。」
「ふむ。じゃあ“演出”が必要だな」
犬上はスケッチブックの2ページ目を開いた。
そこには、4人の名前がそれぞれ書かれた円と、その周囲に枝分かれした線――まるで人間関係相関図のようなものが描かれている。
「佐野は美術部の佐久間と付き合ってる。庄司はSNS依存。永瀬は盗撮癖あるって噂。野田は、ゲームのチート使ってる」
「ソースは?」
「“調査済”」
犬上はポケットから、分厚いフロッピーディスクを取り出す。
「こいつに“演出用素材”をまとめておいた。ネタは十分」
強志は目を細め、唇の端をわずかに持ち上げた。
「……舞台は整ったな」
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【復讐プラン(概要)】
① 佐野圭介
→ 美術部の佐久間のPCに、佐野の偽ラブレターをPDFで仕込む。文章の最後には“部垂って知ってる?”と書く。関係は即終了。
② 庄司拓真
→ 掲示板で彼の投稿とされる“自演日記”をコピペで拡散。SNSで“ナルシスト晒し”タグを付ける。
③ 永瀬裕貴
→ 部室の隠しカメラ映像(事実無根だが編集済)を、校内LANにアップ。警告文とともに掲示板に匿名投稿。
④ 野田智弘
→ パソコン部のマシンに遠隔から不正アクセスし、ゲームのセーブデータを“全消し”。その後、チート履歴を“職員室”の共有フォルダに匿名送信。
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「証拠は?」と犬上が言う。
「残さない。俺たちの武器は“情報”と“匿名性”だ」
ふたりは静かに握手を交わした。
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