奈落の焔
@hotaruko_miyabi
第1話 穏やかな日々は燃えさる
その日は穏やかな日だった。鳥が囀り、風が髪を撫で、人々の笑い声が聞こえる。そんな日だった。そんな日だったんだ。いつもと変わらない日。愛おしい日々。だからこそ絶望がよく映えた日。
「え?」
その日、弟ルカの誕生日のプレゼントを買いに街に出かけていた。月が私の影を濃くする時間。急いで家に帰った。そこは地獄だった。肉の焼ける匂い。阿鼻叫喚。
「屋敷が、燃え、てる?」
勢いよく戸を開け、屋敷に入る。目の前には死体、死体、死体の山だった。全部、全部見知った顔。今朝笑いかけてくれたその顔には生気は宿ってなかった。
「ね、ぇ、さま」
「ルカ!」
弟のルカにはまだ息がある。助け出そうとしたその時、屋敷の奥から声が聞こえた。
「あれ、まだ生き残りがいるじゃん?はー、めんどくさ!」
「早く始末すればいいだろう」
とても恐ろしくて足が立ち竦む。
「っ!早く走って!」
屋敷の外の森に向かって勢いよく走り出す。弟を置いて。
「はぁっ、はあっ、!」
どのくらい逃げただろうか。屋敷はもう見えない。肉の焼けた匂いだけがこびりついて消えなかった。
「っ、え?」
「はぁ、手間取らせるな、よ!」
追ってに足を掴まれ、勢いよく頭を殴られた。真っ赤な血が金色の髪を染める。殺される。でもエリシアは怖くなかった。その瞳は復讐の焔で染まっていた。それは恨み。それは憎しみ。…それは殺意。少女は願った。愛おしい家族を、幸せを奪った奴らを一人も見逃さないと、死にたいと思えるほどの、地獄を。その燃えるような思いを陰は見逃さなかった。
「あんたぁ、オレに何を差し出せるぅ?」
エリシアは迷いなく答える。
「わたくしのこの復讐心、そして、命を」
そう答えると同時にエリシアを襲おうとしたやつの首が飛んだ。
「肝が据わってるねぇ、気に入ったぜぇ?嬢ちゃん!」
月明かりに照らされ現れたそいつは漆黒の髪に血のように赤い目を持った…悪魔だった。
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