「天照大御神の導きで巫女になった私が、天才プロデューサーの眼力で一夜にして学園アイドルに大転身!」

🕰️イニシ原

第一話 天照大御神

夏の終わりの夜明け前、涼しい風が森の木々をそよがせ、

勢楽せら神社の石畳に朝露あさつゆが光る。


天崎志乃あまざきしのは苔むした鳥居とりいをくぐり、

拝殿はいでんへ一歩ずつきざむように歩く。

重い足取りで立ち止まり、肩を震わせ息を整えた。

孫娘・結月子ゆづこの写真を、そっと握りしめる。


朝日が木々の隙間から差し込み、拝殿はいでんの鈴が静かにひびく。

光が志乃の影を石畳に長く伸ばした。


そこにもう一つ志乃の影に寄り添った。影。


そちらには木々の間に金色こがねいろの光が集まり、

白と金の十二単じゅうにひとえをまとった女性が現れた。


斯様かよう人跡稀じんせきまれなる地に来たるは、珍しきことよ。

志乃、我は天照あまてらすなり。何故なにゆえ此処ここりや?」


志乃は写真を再びにぎりしめ、ハッとして無口のまま立ち尽くす。


天照は志乃を見つめながら首をかしげた。そして――


「こんな人が全然来ない場所に来るなんて、マジ珍しいじゃん!

志乃、あたし、天照だよ。なんでここにいるの?」


震える声で志乃が呟くつぶや。「え……、まさか…本当に神様かみさまですか?」


天照が森を歩くと、木々の間に光輝く新たな本殿ほんでんが現れた。


天照は微笑ほほえみ、「ふふ、今のはどうやらなまりだったようだわ。

あなたも入りなさい」と志乃をさそった。


本殿の扉が開き、古木こぼくの香りに混ざって柔らかなクッションと

電気の明かりが目に入る。


志乃は震える手で写真を胸に押し当て、ためらいながら一歩踏み出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る