イヴとミルクの物語③『オーティスの夏』大きなしれんの後には、みんなのハッピーエンドが 対象：小学校四年生位～ 毎日の読書週間におすすめ☆

第１話 たんじょう日の準備３

「やあ」

　オーティスが息（いき）を

はずませて言（い）いました。

「やあ、

オーティス。

それにルルちゃんも」

　やって来（き）たのは黒（くろ）い

ラブラドールの男（おとこ）の子（こ）、

クロでした。

真（ま）っ赤（か）なオープンカーに

乗（の）っています。

「この車（くるま）、どうしたの。

かっこいいなぁ」

　オーティスは目（め）を

かがやかせて、車体（しゃたい）に

両手（りょうて）を乗（の）せました。

それはクロにぴったりの

サイズの、二人（ふたり）乗（の）りの車（くるま）で、

後（うしろ）ろにはトランクもついていました。

「たんじょう日（び）のプレゼントに、

おじさんが送（おく）ってくれたのさ。

今日（きょう）はいい天気（てんき）だろう。

せっかくだから、湖（みずうみ）まで

ドライブしようと思（おも）ってね」

　クロは気持（きもち）ちよさそうに、

真（ま）っ黒（くろ）な鼻（はな）をクンクン

動（うご）かして、風（かぜ）のにおいを

かぎました。

「桜（さくら）ふぶきの下（した）を

走（はし）りぬけるなんて、

さわやかな気分（きぶん）に

なるんでしょうね」

　ルルが言（い）いました。

「ああ。

むねがすっとして、

どんななやみも

ふきとんでしまうよ」

　そう言（い）うと、

クロはブルンブルンと、

勢（いきお）いよくエンジンを

鳴（な）らしました。

「そうだ、

よかったらこれから二人（ふたり）も、

ぼくといっしょに

行（い）かないかい。

少（すこ）しせまいけど、

だいじょうぶさ。

二人（ふたり）は小（こ）がらだからね。

つめれば全員（ぜんいん）で乗（の）れるよ。

トランクには、

ドーナッツとこう茶（ちゃ）が

入（はい）ったすいとうが

つんであるんだ」

　オーティスはしょんぼりと、

耳（みみ）をたらすと言（い）いました。

「せっかくだけど、

お茶（ちゃ）の時間（じかん）には家（うち）に帰（かえ）るって、

イヴとミルクに言（い）って

出（で）て来（き）たんだ。

帰（かえ）らなかったら

心配（しんぱい）するだろうから、

今日（きょう）はやめておくよ」

　オーティスは車（くるま）の中（なか）を、

きょうみしんしんに、あちこち

のぞきこみながら言（い）いました。

いかにもざんねんそうです。

ルルも、お母（かあ）さんが家（いえ）で

おやつを作（つく）って

待（ま）っていると言（い）います。

「そうか、

ざんねんだなあ。

みんなで行（い）けたら、

どんなに楽（たの）しかっただろう。

じゃあ、また今度（こんど）だね」

　クロはもう一度（いちど）、

軽快（けいかい）なエンジン音（おん）を立（た）てると、

さっそうと走（さ）りさりました。

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の掲載は２０２５年８月１８日です。

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