しみ
墨猫
第1話 変化
何だか朝から腹の調子が悪い。
昨日飲みすぎたかな。
最近元気のない原田を励まそうと昨日飲みに誘ったのはいいが、原田のやつ全然家に帰りたがらない。何軒もはしごさせられて全くたまったもんじゃなかった。
「せんぱいー、俺のどこが悪かったんですかねー。俺、彼女の事すんげー大切にしてたんっすよー。金貯めて一緒になろうって思ってさー、先輩みたいに仕事もそんなにできないけどー、それでも仕事すんげー頑張ってー」
「うん、そうだよな。お前は頑張ってたよな」
同棲していた彼女に突然出て行かれた原田は仕事も手に付かない状態でミスを連発し、今日は吉岡課長にこっぴどく叱られていた。
日頃から俺を慕ってくる可愛い後輩を無下には出来ず飲みに誘ったのだが……俺もここ数年彼女はおらず、仕事漬けの毎日でろくに恋愛のアドバイスなんて出来るはずもなく、ただ話を聞いてやっていた。
「俺、もう訳が分かんないっすよー、俺と一緒にいて毎日が楽しいって彼女いつも笑ってたのに……俺、何を信じていいのか本当にもう分かんないっす」
絞り出す声も次第に弱弱しくなり、原田の目からは涙が溢れ、俺は「うん、うん」と頷きながら原田の目と鼻を店のおしぼりで拭いてやった。
今日が休みで助かった。
泣きつかれて眠ってしまった原田を待ち人の居ないアパートまで送り届け、ベッドに寝かせ途中で買ったペットボトルの水も枕元に置いてやった。
ワンルームの部屋を見渡すとあちらこちらに彼女の物と思われる小物や服が置かれていた。シンクの上にはペアのマグカップもそのままで、主が居ないピンクのマグカップは少し寂し気に見えた。
疲れ切って家に帰り着いたのは、空が少し明るくなった頃だった。
原田は酒が殆んど飲めない。何軒もはしごして原田が飲んだのはコップ1杯のビールだけ。あいつが泣きながらつぶやく愚痴をずっと聞きながら、飲むしかない俺の胃袋には酒以外ろくなものは入ってなかった。
横になったが腹が痛くてすぐ目が覚めた。何度もトイレに駆け込み、もう何も出るもんが無くなった頃、俺はそれに気付いた。
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