私が勇者だったって絶対バレちゃいけないんですけど

種・zingibercolor

1章

プロローグ

 異世界転移して勇者をしていたことがあった。7年くらい。頑張ってこの世界に帰ってきたけど。

 そう、頑張って、異世界転移した直後の時間に帰ってきたのである。トラックにひかれて死んだと思ってたけど、実際には全身打撲と気絶で済んでた。左足の義足は壊れたけど。

 だから、長い夢を見ていたようなものだと思って、今もピペット土方をやっている。

 希少難病など、需要が少ないながら確実にあるバイオ製薬。その原料を酵素反応で作り、精製するのが私の仕事だ。

 同僚は多いが、大したことは話さない。無難な雑談、天候や流行りの話、その程度。単調だし高給じゃないけど、安定した暮らしだ。

 そんな暮らしが、ある日いきなり破れた。

 昼休み、実験室を出て休憩室へ。休憩室には小さいテレビがあり、いつも適当な昼番組を流している。

 その昼番組が、今日は特番だった。横浜みなとみらいのランドマークタワーを背景に、アナウンサーががなっていた。

「情報が入りました! みなとみらいグランモール公園円形広場に現れた人物たちは、異世界から転移してきたと主張し、この世界に「勇者」なる人物を探しに来たとのことです!」

 ……は?

 テレビに映し出されたのは、見覚えのある面々。かつて勇者として異世界を駆けずり回った、あの頃の仲間たち。

 ……嘘でしょ? きちんと後始末してきたよ? なんで探しになんか来るの!?

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