第21話 殺戮怪人 セッショー
充満したお香の煙でモヤがかった道教施設にバンコの笑い声が響いていた。
バンコ「懐かしや、転生した現代でもアレを見ようとはな。」
道士姿のバンコが目を細めて、転生前の自分を思い返した。未開の星だった地球に降り立つ八柄の剣を携えた1人の巨人。
エンノ「宿命というやつですかな?」
陰陽S「その後、この日本では天の沼矛として語り継がれた代物。」
三人はいつものごとく椅子を並べて話し合っている。
エンノ「イザナギとイザナミか。奴がそれに気がつくかな?」
さぁ?と陰陽Sは続けた。
陰陽S「フォックス次第。奴のあの少年を想う心、それ次第といったところでしょう。」
バンコ「なにはともあれ、我らは、行く末を見守るとしよう。」
朝食、リビングのテーブルでトーストと卵、ウィンナーを食べていたサエキ。そこに、何気なく付けていたテレビから不穏なニュースが始まった。
サエキ「……連続通り魔事件だって?」
フォークで刺したウィンナーが口元で止まる。
キャスター『これまで男性だけが被害者になっている連続通り魔事件。これについて警視庁で長年、殺人事件の犯罪心理プロファイリングを務めてきた鑑識さんにお話を伺いましょう。』
鑑識『被害者はスポーツジムに通ってるか、日頃から体を鍛えてる方々でした。このことから犯人は腕に相当な覚えがあることがうかがえます。』
キャスター『被害者は皆、深い1本の切り傷が致命傷になっています。これについてはどうでしょうか?』
鑑識『これを、ナイフでこれをやったとなると一振りでは難しい。相当、長い刃物を持っている。そんな奴が、町中をウロウロできるでしょうか?』
キャスター『と、いいますと?』
鑑識『用意周到に待ち伏せしたにしても犯行の間隔が早すぎると思います。獲物を下調べする者と犯行に及ぶ者と複数犯いるのかもしれません。』
キャスター『今後、女子供が狙われる可能性は?』
鑑識『分かりません。これまでの事件の男性ばかりを狙う傾向が変わらないなら、可能性は低いのではないかと。』
キャスターと鑑識のやりとりは続いた。
サエキがテレビを見入っているので母親が見かねて早く朝食を済ませるように促した。
母「リョータ。早く食べ終わらないと、遅刻するわよ!」
サエキ「あぁ、そうだった!」
登校すると、サエキはすぐに、男性教員たちに呼び止められ、下級生の課外授業に同行するように言われた。
男性教員「通り魔事件があるからな。サエキ、頼む。」
サエキ『長い刃物を持って歩けるわけがない!これはきっと、ソッカー関連の事件だ!』
時間が停止した中でも動ける自分なら犯人に対抗できると思ったサエキは二つ返事で了承した。
課外授業は学校からそれほど遠くない護国寺の見学だった。サエキも引率の傍ら、境内を見て回った。
サエキ『へぇ、持国天、増長天、広目天、多聞天(毘沙門天)か。かっこいいな。』
寺の中には、釈迦如来の四方を護る。四天王の像が鎮座していた。
ゴゴゴゴゴゴ……
???「ん?お前、」耳鳴りの途中、誰かがサエキに声を掛ける。
ピキッ
時間の止まった世界で蠢く影。
サエキはいつの間にか下級生たちの間にいた男と目が合った。体の大半をサイボーグ化し、毛をマゲのように後ろで縛った大男。右手には刀がぶら下がっていた。腰の左側にも刀が差してあるのに変だなと思いつつサエキは変身した。
サエキ「赤い海!クウカイレッド!」
サイボーグの男「やはりお前がクウカイレッド。」
サエキ「出たな!ソッカー!連続通り魔事件はお前がやってたのか!?」
サエキはサイボーグの男に殴りかかったが、男は後ろに飛んでかわすとサエキと距離を取った。
セッショー「そうだよ。俺の名はセッショー。ソッカー最後の怪人。刀を受け取れクウカイレッド。」
ガシャッ!
サエキの足元にセッショーは持っていた刀を投げた。
サエキ「!?どういうつもりだ!?」
セッショー「俺は丸腰のやつは切らない。これまでも、そして、これからもな。」
サエキ『今までのやつと思想が違う?!』
セッショー「ここは狭い。人も巻き込む。表にでろ。」
境内の参道の横の広いスペースでクウカイレッドとセッショーは対峙した。
セッショー「今までの奴は見た目とは裏腹に刀は扱えなかった。切り結ぶ、命のやりとりもできなかった……お前はどうかな?クウカイレッド。」
サエキ『そんな身勝手な理由で……』「お前をこの場で倒す。」
サエキとセッショーは刀を抜いた。
同時に踏み込む。
ガキィン!
鍔迫り合い。
セッショー「ほぉ?俺の一撃に合わせたか、しかも、パワーもほぼ互角じゃぁないか。」
セッショーに蹴り飛ばされ、サエキは後退りした。
ズサァ!
サエキ「くっ!」
セッショー「だが、技量はどうかな?」
セッショーは片手で器用に刀を回してみせた。
その時、サエキの中に何かが浮かび上がってきた。
???「我らが加勢しよう、少年!」
それは四人の男たちに姿を変える、それは今さっき見た四天王の姿そのものだった。心の中のサエキを四天王が四方を囲む。
持国天「我ら四天王!」
増長天「日本と、仏道と共にあり!」
広目天「カルトになぞ、この国は渡さん!」
多聞天「いくぞ!セッショーとやら!」
サエキはセッショーの間合いに飛び込むと剣を連続で打ち込んだ。
セッショー「いいねぇ!そうこなくちゃ!」
セッショーはサエキの袈裟斬りを切り払い。返す刃で刺突を繰り出した。
サエキ「うっ!」
サエキはセッショーの一撃をかわし、後ろに飛んで距離を取った。
持国天「やるなぁ!」
増長天「感心してる場合か!?」
広目天「奴の弱点は……」
多聞天「斬り結べは見えてこよう!」
サエキ「いくぞ!」
セッショーは切り合い、死合を望む侍だとサエキは感じ取った。だからと風神、迦楼羅天の陰陽道はまだ出番ではないと思っていた。
サエキ『切り札は取っとくもんだ!』
サエキは踏み込んで全身の力を込めてセッショーに打ち込んだ。セッショーはそれを刀の腹で受けた。
バキィン!
サエキはセッショーの刀を折った。
サエキ「やった!」
セッショー「!」
セッショーはサエキを殴り飛ばした。咄嗟の出来事にサエキは吹き飛ばされた。
サエキ「うわ!なに?!」
セッショー「ハハハ!まさか、ここまで追い詰めてくるとはな!」
セッショーは隣に空いた空間から赤い禍々しい紋様の刻まれた抜身の刀を取り出した。
セッショー「ジョーモンブレイド。いいねぇ、俺好みだ。」セッショーは初めてその刀を見るかようにマジマジと刀を眺めた。
更に、セッショーの人間だった部分もサイボーグに変わる。
セッショー「メタルスモッグ蒸着。この姿になるのも初めてだ。」
全身メタリックな造形に変わったセッショーは赤い刀を中段に構えた。
セッショー「さぁ、第2ラウンドと行こう!クウカイレッド!」
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