第5話 邪視

今日はサッカー部のレギュラー決めの日。

サエキはイソイソと他の部員について部室に集まった。

サエキ「……俺の名前、呼ばれなかった……」

サッカー部員「ドンマイ、ドンマイ。」

前の試合でもそこそこ活躍してたけど、バイトとかであまり参加してなかったせいだろうか?サエキは納得がいかずにコーチに詰め寄った。

コーチ「まぁ、そう言うなよ。毎日のコミュニケーションって大事だろ?コレでお前も他のことにも性が出るだろ?」

疎外感。ここで俺は必要とされていない?サエキはムキになって、練習に入れる日は夜遅くまで続けた。


ヌキナ「聞いて!聞いて!繁華街でスカウトされちゃったの、私!」

サエキ「……休み時間に何しに来たかと思えば。」

ヌキナはデモテープとして自分の動画を見せたらしい。

アイドルグループの新曲の歌ってみただ。それと、過去作の演歌なんかの歌ってみた動画も見せたらしい。サエキは中間テストの勉強や部活の疲れもあり、始終、生返事をしていた。

ヌキナ「んもう!ワカマツ君もそんな反応だったのにサエキ君まで!?私デビューするかもしれないのよ!」

サエキ「そうなるとナンマイダーの活動は?」

ヌキナはしばし考えて答えた。

ヌキナ「あー、デビューしたてはなんか給料低いとか言ってたし、固定の信者がつくまで続けようかな?日当5万は破格だもん!」

ヌキナは貧乏だからお金のことになると細かい。スカートからはみ出た白いパンツもどこか生活感がにじみ出ていた。

サエキ『フシミ先生のは、どんなのだろう?』


中間テスト

サエキは一夜漬けにしては数学はできた方だと自信があった。

サエキ『ふわー、次も頑張るかぁ。』

次のテスト。解けない問題を飛ばして次のを解く。

サエキ『あれ?コレも難しそうだな。ん?』

横の男子生徒の視線に気づく。生徒は目が合う前に自分のテスト用紙に目線を落とした。

サエキ『なんだ?まぁ、いいか、問いに集中しよう。』

その答えは後日、職員室で知らされることとなった。

教師「お前らのどちらかがカンニングしただろ?同じ問いに同じ間違いなんてありえないんだよ。サエキ、なんか言いたいことはあるか?」

サエキとサエキの隣の席にいる男子生徒は職員室で担当の教師の前に呼ばれていた。

サエキ「俺?!俺はしてません!コイツです!チラチラこっちを見てやがったのは!」

教師「そうなのか?」

生徒「俺はやってません。」

シラを切るつもりだ。サエキは怒った。

サエキ「テメェ!嘘つくなよ!」

生徒「怒った!?先生、やったのはサエキ君じゃないですか?!怒るのは後ろめたいからだ!」

しまった。奴は俺が怒るのを待ってたんだ。

それを隣の島で見ていたフシミが立ってサエキを擁護した。

フシミ「サエキ君はカンニングするような子じゃありません!部活動もバイトも一生懸命に頑張る、正義感の強い子です!」

それを聞いた教師も小さく「確かに。」と答え、カンニングの件は得点にはなってなかったので、うやむやに終わった。

サエキはフシミにお礼を言いに行った。

フシミ「こんなんで腐るんじゃないわよ?世の中に出たらもっと理不尽なことが待ってるもの。」

サエキ「俺、そんなのに負けません!」

フシミ「頑張れ、少年。」


その日は、バイトに行く日でサエキ、ワカマツ、ヌキナは珍しく駐輪場に揃っていた。

ワカマツ「お前ら早く来いよな。特にサエキ。」

サエキ「うるせーよ、わかってるって。」

ワカマツだけスクーターだ。サエキとヌキナは自転車を抜き出した。

ゴゴゴゴ……

いつもの耳鳴り。

ワカマツ「これは?!」

サエキ「時間停止力場?!」

ヌキナ「これからバイトなのに!あ、まぁ、いいのか。」

おいおい。ワカマツとサエキは首をすくめた。

サエキとワカマツはスクーターと自転車を降りた。

ピキッ

時間が止まる。サエキの自転車が地面に倒れる寸前で止まる。あたりに人は居ない、巻き込むのは自転車たちだけだろう。ハカイソー達とジャーケンとか言う目玉の怪人がどこからともなく集まってくる。

ジャーケン「小僧!今回は以前のようには行かないぞ!」

ハカイソー達の警棒が以前より長くなり電気を帯びている。

ヌキナ「当たると痛そー。」

サエキ「言ってる場合か!」

ワカマツ「二人とも行くぞ!」

合掌。

ワカマツ「シンランブルー!」

サエキ「赤き海!クウカイレッド!」

ヌキナ「蓮の花!ニチレンピンク!」

ハカイソー達が3人に襲いかかる。

ワカマツ「え?ヌキナさんも?!」

ヌキナ「えへっ!」

サエキ「みんなドッコガンだ!」

3人はドッコガンを持つとハカイソーの群れに立ち向かった。

ビー!

ドッコガンの光線をハカイソーは警棒で受け止める。

バチチッ!

ヌキナ「え!?」

サエキ「弾かれた!?」

それを見たジャーケンが高らかに笑う。

ジャーケン「ははははは!ソッカーの科学力を舐めるな!小僧ども!」

そこへフォックスが飛び込んできた。警棒でハカイソーを華麗に倒す。ハカイソー達は動揺して一瞬動きを止めた。

フォックス「今よ!」

サエキ「喰らえ!」

3人はドッコガンを連射した。対応が遅れたハカイソー達は警棒で受け止めることができず、次々にかき消える。

ジャーケン「ぬう!小癪な!」

残ったハカイソー達が目玉の怪人の後ろに下がったと同時に怪人の大きな目玉が怪しくフラッシュした。

ヌキナ「なに?」

サエキ「気をつけろ!俺達がでてくるぞ!」

ワカマツ「?何言って?」

サエキが言い終わる前に怪人の目から黒いシンランブルー、クウカイレッド、ニチレンピンクが3Dプリンターのように出て来た。

ワカマツ「うわ!」

ヌキナ「私達じゃない!?」

黒いナンマイダー達が襲いかかってきた。が、サエキ達はドッコガンを落とさない。

ビー!

今度は落ち着いて迎撃した。しかし、黒いナンマイダー達は手でそれを受け止めた。

バチぃ!

黒いクウカイレッド「きくぅ!」

少し、電子ノイズがあるがサエキの声とほぼ一緒で、

ハカイソー達とは違い黒いナンマイダー達にはドッコガンの光線が効かなかった。

ワカマツ「なんだって?!」

ヌキナ「効いてないじゃない!?」

その時、校舎からシッダー博士が顔を出した。

シッダー博士「ナンマイダー!ミョーオーキャノンだ!」

サエキ「え!?あれを!?」

ワカマツ「やるしかない!」

ヌキナは頷いた。

フォックス「目を閉じてなさい!ひよっこ達!」

フォックスが投げた閃光弾で作った隙でナンマイダーは黒いナンマイダーたちから距離を取った。

ナンマイダー「「「ミョーオーキャノン!!!」」」

空間から大きなキャノンが出てきて3人はそれを協力して持った。

ワカマツ「標準!」

サエキ「喰らえ!ソッカー!」

ドバァッ!

キャノンの砲身から極太のビームが射出された。

チュドーン!!

ジャーケン「ぐわぁぁぁ!」

ソレは黒いナンマイダー達も怪人も残っていたハカイソー達も諸共に消し去った。

グワァァン

鐘をついた時のような音とともに急速にもとの世界に戻る。

それと同時にナンマイダーのスーツも元の制服に戻った。

そして、いつものようにフォックスもいなくなっていた。

サエキ「やったな!」

ワカマツ「あぁ。」

ヌキナ「疲れたぁ、これからバイト?私、休むわぁ。」

ええぇ!ワカマツとサエキは顔を見合わせた。

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