第21話 新たな序列
俺とアナスタシアの戦いに触発されたのか、その後、クラスメイト同士の模擬戦はしばらく続いた。
俺はというと、リリィとの約束を果たすため、きっちりと一戦交えた。
「よーし!本気で行くよ、ユリウス!」
リリィは軽やかなステップで距離を詰めてくる純粋な近接型。
だが、徒手空拳を主とするようで、剣を使う俺の方がリーチが長いし、なにより、近接型は相性もいいので、負ける気はしなかった。
結果、問題なく勝利を収めた。
……ただひとつだけ残念だったのは。
「……いや!そこはやめて!首は刈らないで!」
俺の姿が消えるたびにやたらと首の後ろを警戒されてしまい、三戦連続で決めたかった“首トン”が不発だったことだ。
「うぅ……タイミングばっちりだったのに……。別にダメージはないんだからいいじゃん。一瞬で気絶させてあげるから、普通の攻撃より痛くないよ?最初は怖いかもしれないけど、一度経験したらきっと慣れるよ?」
「いや!慣れるとか意味わかんないし、なんか首を狙うとときのユリウスの顔が怖い!」
そんなに嫌がらなくても……というか別に顔は普通だろ!
……それはともかく、意外だったのはアナスタシア。
てっきりもう模擬戦はやらないかと思ってたのに、ヴィクトルからの申し出をあっさり受け入れた。
「今度は勝たないとね」
そう言ったアナスタシアは、氷を自在に操り、戦いを完全に制圧して快勝した。
ヴィクトルは接近戦を早々に諦め炎剣で氷に対抗しようとしていたが、アナスタシアの氷とは規模が違いすぎた。改めて、アナスタシアのスキルは規格外だな。
「……くそっ、次は絶対勝つ」
うーん、これは相性や属性の問題もあると思うよ。
ついでに、カイルとテオにも模擬戦を申し込まれたので、来るもの拒まず、きっちり相手をした。
特に今日は放課後イベントも控えている。
俺の提案したルールを素直に受け入れてくれる雰囲気を作るには、“リーダーとして文句なしの強さ”は欠かせない。
カイルのスキルはちょっと特殊だったけど、二人とも基本は近接タイプだったので問題なく勝てた。テオはなぜかスキルを使ってる様子がなかった。俺と同じであんまり見せたくないのかもしれないな。
実家で嫌と言うほど鍛えられたお陰で、俺、スキルなしでも結構強い方なのかもしれない。
「やっぱりユリウス強いなー」
とテオ。
「……次は勝つ」
とカイル。
二人とも素直でいい奴だ。でもやっぱりカイルはヴィクトルと被ってるから何とかしてほしい。
ちなみに、リリィとテオも模擬戦をしたが、徒手空拳同士、かなり接戦で見応えがあった。
パワーはテオの方が上回っていたけど、リリィは手数と技術で補っていた。
最終的には、上手くスキルを使ったリリィが押し切った。
「ふっふーん、やったね!」
「ちぇー。まだまだ実力不足かー」
リリィの天真爛漫さに、テオも清々しい顔をしていた。
そんなこんなで、初日の模擬戦を終えたAクラスの序列は、こうなった。
第1位 ユリウス
第2位 アナスタシア
第3位 ヴィクトル
第4位 ノア
第5位 リリィ
第6位 フィン
第7位 カイル
第8位 テオ
第9位 ミリア
第10位 セレナ
俺が第1位になった結果、上がずれたけど、それ以外の順位にほとんど変動はなかった。
教師陣の見立てって結構正確なんだな。
……さて。
序列も決まったところで、いよいよ“放課後スイーツ遠征”の始まりだ!
***
放課後――。
俺たちAクラスのメンバー全員は、王都でも有名なケーキ屋に来ていた。
「うわ、混んでるな……」
人気店らしく、入口から人が溢れんばかりに並んでいた。これじゃ入店は厳しいかも、と思ったそのとき。
「あっ……アナスタシア様!?」
店員の一人が彼女を見た瞬間、文字通り目の色を変えて駆け寄ってきた。そして、すぐさま俺たちを店の奥へ案内し始める。
……え、なに?なんかのバグ?
「アナスタシア、何かコネでもあるの?」
思わず尋ねると、横からリリィが呆れたようにため息をついた。
「ユリウス、もしかしてアナスタシアのこと知らなかったの?」
「いやだって、入学するまで会ったことなかったし。学園でも家名とか伏せられてるしさ」
リリィがちらっとアナスタシアの方を見る。
すると彼女は軽く肩をすくめて、
「別に隠してるつもりはないわ。知られても困らないし。それでどうこうなるものでもないしね」
「アナスタシアはね、公爵家の長女よ。つまり、将来の公爵家当主」
「へぇ……そりゃすごい。どうりでVIP待遇なわけだ」
「別に私が凄いわけじゃないわよ。普段こういうところに来ないから、珍しがられてるだけじゃないかしら」
いつものクールな口調だが、その内心がほんの少しだけ柔らかくなったような気がした。
個室に通されると、みんな思い思いにスイーツを注文し始める。
その後はあちこちで雑談の輪ができて、いつもより明るい空気が流れていた。
……まあ、その中で俺が座ってるテーブルは例外だったけど。
何せ、アナスタシア、ヴィクトル、俺という、トップ3(一匹狼×2)の布陣。
「で、あの時の気配のズレはどういう仕組みだったの?」
「お前、剣士タイプなのに気配を消すのが上手すぎないか?普段どんな訓練してるんだ?」
――感想戦ばっかだよ!
「まあ、模擬戦のことは一旦いいじゃん。もっと別のこと話そうよ。ほら、ケーキも来てるし」
「でも、気になったら分析したくなるのよね」
「俺もだ。負けた後は、きちんと理由を言語化しておきたい」
こいつら、どんだけ真面目なんだよ。
仕方ないからある程度話に付き合ってあげたら、ようやく話題が変わり始めた。
「そういえば、ユリウスって貴族?平民?今までパーティーとかで見かけたことなかったけど、言葉遣いや立ち居振る舞いは変に洗練されてるのよね。もちろん、言いたくなかったら言わなくてもいいわ」
ふいにアナスタシアから質問が飛んできた。
「ああ、俺はレオンハルト辺境伯家の次男だよ」
「レオンハルト。なるほどね。あそこなら王都からかなり離れてるし、交流がなかったのも納得だわ」
「ヴィクトルは?どこで剣を学んできたの?」
「ああ、うちは代々騎士の家系なんだ。だからずっと屋敷で父親に鍛えられてた。仕えてる領地が平和で、実戦経験はほとんどないがな」
そう言って、ヴィクトルは苦笑する。
「……剣が単調って言われたのも、そのせいかもな」
「う……ごめん。あれはテンション上がってつい口が滑ったんだ。これからいっぱい戦って経験積めば、きっともっと強くなるって!」
「……そのつもりだ」
それぞれに背景があって、それぞれの目標がある。
初めてこの世界で、“ただの放課後”みたいな時間を過ごしながら、少しずつ絆のようなものが育ち始めている気がした。
そして、このお陰かは分からないが、この翌日からの教室の空気は、これまでまでと比べてかなり和やかになった。
ちなみに――
この日を境に、アナスタシアはスイーツに目覚める。
その後、彼女が何度か女子メンバーを引き連れ、“スイーツ巡り”に出かけていたことを、俺は後になってから知ることになる。
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