【コミカライズ】お飾り妻は、自分の機嫌を取っている場合ではない

有沢真尋

第1話

 いつの頃からか「自分の機嫌は自分でとる」という言葉を、耳にするようになった。


 曰く、不機嫌もあらわに、誰かによしよししてもらおうとしている者は、未熟で幼稚で鬱陶しい、付き合いづらい人間だというのである。

 自立した大人は、自分の機嫌は自分で取る。


 シンシアはそれを聞いて、もっともだと思ったものだ。

 嫌なことがあったからといって、ふくれっ面でむすっとしていて、誰かに「何かあったの?」と声をかけてもらおうだなんて、子どもじゃないんだから。

 言いたいことがあるなら、言うべき。

 言えないことであったり、言わないほうが良い相手に関することなら、自分にできることはないと割り切って、いっそ面倒事そのものを忘れるに限る。


 そして、綺麗なものや楽しいものを見て、美味しいものを食べて、笑ったり騒いだりして気を紛らわせるのだ。

 人前に出るときは笑顔で。耳目のあるところでゴシップになるような愚痴を口にすることはなく。


(そうよ、決して誰かから「どうしたの?」と聞かれるような顔をしていてはいけない。うっかり、口をすべらせてもいけない。婚約者が他の女性と親しくしているとか、どう見ても不適切な接触を持っているだなんて、で「表情をくもらせている」場合じゃないんだわ!)



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