損害精算スキルで強くなる

第1話 母の死とスキルの目覚め

その日、俺はまだ5歳だった。

温かい膝の上で、やさしい香りに包まれていた。母の柔らかな歌声と、指先のぬくもり。その全てが、世界のすべてだった。

だが、その安寧は、鋼の音で断ち切られた。

王宮の奥、東の塔にある母の私室──その扉を切り裂くように、刃が舞い込んできたのだ。

赤い──いや、黒い──そんな音が、床に広がった。

「……ユウリ……に、だけは……」

母は、俺を抱きしめたまま息絶えた。殺したのは、王宮騎士団の男。直属ではない。恐らく、別の貴族派閥からの刺客だ。

その瞬間、自分の視界に、見慣れぬ"ウィンドウ"が浮かんだ。

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> ユニークスキル《損害精算（Damage Reimbursement）》が発動しました。

あなたが受けた不当な損害に応じ、能力を取得します。

※現在の損害：母親の死

精算内容：魔力感知Lv1、スキル《深層地図》、スキル《鑑定》、スキル《精算計算式》、ステータス全上昇

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俺は、その場で泣き叫んだ。だがその裏では、確かに"力"が芽吹いていた。