いつもこう
海馬は泣いている。
いつもこうだ。
かかりつけの病院の人は知っているが、他人には伝えてない。
先生にすら。
発達障害なのではと伝えてくれたのは、今の担任の先生が初めてだ。
その時は、手が震えて電話を勢いよく切りそうになった。
でも、日記を見て確信した。
いや、してしまった。
頭のなかで回り廻る。
なぜ?
なぜ?
なぜ?
なぜ他の担任の先生は知らせてくれなかったのだろう。
なぜ私達は気づかなかったのだろう。
なぜ、海馬なのだろう。
情けない。
不甲斐ない。
きっと、海馬だけの世界が広がっているのだろう。
私達には理解できやしない世界が、海馬の頭のなかに。
検査はそつなく終わった。
泣きつかれて、海馬が諦めたからだ。
海馬は明日になると、昨日のことを忘れてしまうことがある。
だから、日記も続いていない。
むしろ、三日続いたのが奇跡のようだ。
今日は、海馬の大好きなハンバーグにしよう。
久しぶりに、みんなで食べよう。
温かいご飯を作ってやろう。
そう思えた私は、まだ母親でいいのだろうか。
いや、まだ母親でいたい。
痛いけど、幼気な、海馬の母親に。
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