頭が悪い

 海馬君は頭が悪い。

 批判としてではなく事実として、他の子供よりも頭が悪い。

 たぶんだけど、海馬君は家でも勉強してないだろうし、してても理解できてないのだろう。

 幼稚園児よりは頭がいいと勝手に思っている。

 教師が勉強を教えるのは義務だと思う。

 私が教えようとすること事態が、義務なのだと感じる。

 だって私は教師なのだから。

「海馬君。」

「ちょっといい?」

 そう言ったとたんに周りはクスクスと笑い始める。

 海馬君も笑い始めそうだった。

 でも、我慢してる様子だ。

 海馬君の行動が理解できない。

 親は理解できてるのだろうか。

「お勉強教えてあげる。」

 そう言った瞬間、海馬君の目はキラキラと輝き始めた。

「いいの?!」

 大声で言ったから周りは大爆笑。

 海馬がお勉強教えてもらうんだってなどと声がするが、私は思う。

 お前らも教えてもらってた側だろうが、と。

 まぁ、言わないけどね?

 教え始めたら、私の実力不足を痛感した。

 漢字がなにもわかっていなかったのだ。

 一年生の漢字すら。

 幼稚園児ですらもっと知っているレベルだった。

 もう、小学校六年生なのに。

 もう、小学校六年生なのに?

 親は何をしてたんだろうか。

 こんな子供を放っておいて仕事に行くなんて。

 いや、責めるべきは親だけじゃないな。

 学校の教師は何をしてたんだろうか。

 頭を抱える私。

 笑う小学生。

 嬉しそうで楽しそうな海馬君。

 これは、親に電話しないといけないな。

 一度話さなければならないだろう。

 特別学級に海馬君が入ることも。

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