第15話

楽しかった時間はあっという間に終わってしまった。

 教室での時間が地獄だった。

 今までは聞かないようにしていた言葉も、今日はなぜかはっきりと聞こえてきてしまう。

「望月、またこっち見てる。きもい」

 麗華ちゃんを見ていないはずなのに、そう言われた。

「てか湿気すごいんだけど。前髪崩れる」

 麗華ちゃんの友達が言うと、その言葉も悪口に聞こえてしまう。

「望月のせいでしょ、雨と湿気は仲間じゃん」

「カビ生えるからやめてほし~い」

 いや、わざと言っているんだ。自分たちがそう言えば、麗華ちゃんが全部拾って私に当てるから。

「なぁ、今日は望月のところ行かないの?」

 莉子ちゃんが、クラスのやんちゃな男子から言われている。

「え、急に何?」

「いや、最近仲良さそうだったから」

「ほら、みっちゃんが仲いいからさ」

 莉子ちゃんは、笑ってそう返していた。

 私は、リュックの中から本を取り出した。そして、机の上で急いで開く。

 周りを見なくて済むように。なにも聞こえなくなるように。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る