リア友のいない私は雑談系VTuber!

赤城ハル

凸待ち

「この前さー、レトルトカレーをレンチンで温めたんだけど、裏表逆に置いてチンしたから爆発しちゃった。もうびっくり。ボンッて音が鳴ったんだよ」

『危ないなー。しっかりしろよ。ずぼらだなー』


 私の発言にツッコミを入れるのはVTuberの仰向あおむけいるか。ガワは黒髪のクール系JK。企業勢VTuber。

 そして私は金髪のゆるふわ系女の子。名前は鹿熊ミカ。個人VTuber。


 今は私の凸待ち配信で仰向いるかがやってきて雑談中。

 ちなみに凸待ちというのは相手からの連絡を待つというやつ。


「いやー、久々のレトルトカレーだったからさー。……てか、ずぼらはそっちでしょー」


 仰向いるかは料理しないやつだ。料理しないイコールずぼらとは言い難いけど、それでも私よりずぼらだ。


『一人暮らしでカレーなんて作り過ぎて大変でしょ? レトルトでいいじゃん』

「2日目のカレーも美味しいですぞ」

『……2日連続カレーとか嫌じゃない』

「カレー好きですぅー。それに2日目のカレーはジャガイモの甘味成分が溶け込んでいて、ボテっとしてて美味しいんですぅー」

『ウェルシュ菌で腹壊すぞ』

「ぐつぐつに煮立てますからー」

『ウェルシュ菌って、100℃くらいまで煮立てないと駄目だったはず』


 100℃?

 それってもう沸騰クラスじゃん。


「ぐ、ぐつぐつだからー」

『はいはい』

「ま、まあ、それにしても最近レトルトカレーもレンチンが主流なんでしょ? すごいよね」

『そうだね。どんどん手軽になるよね。冷凍もいっぱいあるしね。あっ!? そういえば私、料理したわ。この前、冷凍餃子を焼いたよ』

「それ料理か? 焼いただけだろ」

『フライパンとコンロ使ってんだから料理じゃん』

「そうかな?」


 料理というか調理じゃね?


『じゃあ、あんたはどうやって餃子作ってんの? まさかタネ作って、ひとつひとつ皮で包んでんの?』

「まさか。出来上がってるのを油引いて水入れて、蓋して焼いてるよ」

『古いなー。今は水なし油なしでフライパンで焼くだけで出来るんだぜ。しかも羽付き』

「でもそれフッ素加工のフライパンを使わないといけないやつでしょ? 普通のフライパンでやったらくっつくじゃん」


 水なし、油なしと書いておきながら、小さくフッ素加工以外は油を使ってくださいと書いてある。


『フッ素加工いいぞー。お前よくカツ丼や親子丼作る時、くっつくから失敗するって言ってたけど、フッ素加工ならくっつかないぞ』

「ふーん。ちなみにフッ素とテフロンってどう違うの?」

『同じだったはず。言い方だっけ? 商標だったかな? まあ、同じフッ素加工だよ。フッ素はいいぞー』

「でも、フッ素加工で事故があるよね。熱を与えすぎてフッ素が外れて肺胞を傷つけるって話」

『お前、それは火を消すのを忘れたからだろ? それと換気』

「ま、今のフライパンが駄目になったら買うわー」

『てか、なんで自炊してんのさ? 一人暮らしだろ? 食わせるやつもいねーのに? はっ!? もしや彼氏でもいるの?』

「いねーよ。いたら、さっさと結婚して専業主婦してまーす」


 きちんと即否定。

 VTuberはアイドルと同じで基本恋愛禁止。

 まあ、私は個人だからそこのところはどうでもいいんだけどね。


『今時、専業主婦かよ』


 いるかが鼻で笑った。


「ディスたな!? 専業主婦は24時間365日休日なしなんだぞー」

『休み時間は多いけどな』

「黙れ!」


 確かに休み時間は多い。


『で、話は戻すけど何で自炊してんのさ?』

「私、スーパーの弁当とか嫌手なんだよねー」

『とうして?』

「シンプルに不味くね。唐揚げなんて衣厚いし、ハンバーグも苦いし、海老天もすかすかだし、底上げで容量誤魔化してるし」

『味か……』

「安くてまずいものを食べて満足したくないわー」

『でも、それで救われている人もいるんだよ』

「そりゃあ、金銭的に余裕がない人からすると値引きされた200円の弁当は良いものだけど……それでも私は無理ね。自炊します」


 料理に自信があるわけではないが、手間がかかっても私は自炊する。


『ま、何を買って、何を食うかは人それぞれだからね』

「そうだね」

『ちなみに不味いハンバーグって何? ハンバーグで不味いなんてある?』

「ある。実家にいた頃なんだけど、母が買ってきたハンバーグ弁当がクソ硬くて、苦くてやばいの」


 母が今日はしんどいという理由でスーパーでハンバーグ弁当を買ったのだ。


『硬くて苦い?』

「そうなの! ハンバーグにパン粉って使うじゃん。あれが多いのか、もしくはあとでパン粉を足した感じ。で、一度間違って揚げて、その後で焼いた感じ」

『何それ? ハンバーグなの?』

「だからハンバーグじゃないくらい硬いの!」

『ふーん。で、苦いってのは?』

後味あとあじが銀紙を舐めた感じ」

『うえ、そんなハンバーグ、本当にあるの? 作り話じゃないの?』

「ひどい本当だし。なんなら後でスーパーの名前教えるから」

『あんたの実家どこだっけ?』

「大阪」

『……スーパー、教えられてもなー』


 ここは東京。大阪へは新幹線で約2時間。


「大阪に遊びに行ったら買えばいいじゃない」

『なんでやねん』

「下手な関西弁やな」

『上手な関西弁教えてくれよ』

「そもそもなんでやねんなんて今時の関西人は使わないし」

『そうなの。毎日突っ込んでるんじゃないの?』

「日常にボケもツッコミもねえよ」

『虎柄の服を着たパーマのおばちゃんとかいないの?』

「商店街に行けば会えるけど、普通に会うことはまずない」


 というか私、そんなおばちゃん見たことない。


『一家に一台たこ焼き器があるのは?』

「それはホンマ。うちにもある」

『たこ焼き嫌いじゃなかった』

「嫌いというか苦手なだけ。基本的に私はあんまり好きじゃないから率先して食べない。けど、周りは好きな子が多かったな」


 なぜ皆はあんなにたこ焼きが好きなのか。


『関西人なのにたこ焼きが苦手とはこれいかに』

「全関西人がイメージ通りと思うな」

『ふーん。あんたはたこ焼き作りは上手?』

「……まあ、東京の人よりかは上手」

『それなら今度、オフでたこパしようよ』

「たこ焼き好きじゃないって言ったろ」


  ◯


『それじゃあ、私はそろそろここいらで』


 15分くらい経ち、話題が切れたところで仰向あおむけいるかが退室の旨を伝えてきた。


「いやー、今日はありがとねー」

『私の時もよろしくね』

「オッケー」

『それじゃあ』


 通話が切れて、私一人となる。


「さて、次は誰が来てくれるかな?」


 次の相手が来るまで私はここ最近の小話をして、コメントの反応を見る。リスナーから質問があれば答えるし、リスナーからの意見があれば、それに対しての賛否の発言をする。

 そんな中、『たこパ楽しみだね』というコメントが目に入った。


「たこパしないっつうの」


 てか、オフはしない。

 私は個人勢だからオフで他のVTuberと会うことはない。

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