第36話 忍者アヤメ
「えっ、うそ、なんで?」
アヤメは背後から現れたコタローに驚く。
コタローたちから一度も目を離していないはずなのに何故彼がここにいるのか。
鬼ダンジョンの試験を任されることは忍者職を持つものにとっての憧れで、今回初めて任についたアヤメは張り切っていた。
事前に渡された資料ではコタローたちは鬼人とエルフの亜人2人に毒を使う暗殺者ということだった。
忍者と暗殺者は共通点が多いが忍者の方が上だという自負がアヤメにはあった。
しかし実際はこのように暗殺者であるコタローに後ろを取られ声をかけられるまで気付かなかった。
視線を元に戻すとコタローはメイの隣にいる。
ではここにいるのは誰だ?
アヤメの頭は混乱していた。
『本物の忍者だ!』
コタローのテンションが上がっていた。
憧れの忍者が目の前にいる。
ダンジョンに入ってから最大限の警戒をしていたコタローは違和感を感じていた。
常にコタローたちを追うようについて来ていて、まるで監視されているような感じだった。
これも試験の一つと思ったコタローはモンスターが現れた直後、毒の抜け殻を作り本人は姿を眩ませていた。
この抜け殻は残り香のようにコタローの気配を残しており、また近くで見ても偽物とわからない位精巧にできている。
コタローが姿を消したりすることは事前に話し合っていたので、メイは抜け殻を守るように傍についていた。
そうしてアヤメの元にたどり着いたコタローだが、初めて見る忍者の姿にテンションが上がってしまいつい声をかけてしまったのだ。
コタローと偽物を交互に見て混乱しているアヤメに
「あれ俺の偽物です。変わり身の術ってやつですかね」
「君暗殺者でしょ!なんで忍者みたいなことできるのよ!」
忍者ロールを忘れ素の状態で叫ぶアヤメ。
「ズルいズルいズルい!私だってまだ覚えてないのに!」
半泣きになりながらコタローに詰め寄るアヤメ。
「リン!メイ!早めにそいつら片付けてくれ!」
アヤメを落ち着かせるためにリンたちに鬼たちを倒すよう指示する。
「うー、もう少し遊んでたかったけどゴメンね」
リンは金棒に魔力を込め大鬼を真っ二つにする。
「一気に決めます」
ペアになっていた人型と狼のゴーレムは合体してワーウルフとなり、小鬼たちを薙ぎ払っていく。
コタローとアヤメが戻る頃には鬼たちは全て消えていた。
「コタロー、見て見て。鬼のパンツ拾ったよー」
リンが嬉しそうにパンツを掲げてやってきた。
そしてコタローの隣にいるアヤメに気付くと、
「あっ、忍者だ!凄い、ねぇねぇ忍術見せて見せて」
アヤメに駆け寄り凄い勢いで捲し立てる。
はじめはリンの勢いに気圧されていたアヤメもだんだん調子を良くし、忍術を披露し始める。
「あのコタローさん、彼女は何者なのでしょうか?」
「とりあえず敵ではないと思うよ。」
「さぁ次は何が見たいでござるか?忍者アヤメがなんでもするでござるよ!」
リンの反応にすっかり機嫌を良くしたアヤメは先程のことなどすっかり忘れて調子を取り戻していた。
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