死ねない男
バカモン
第1話:孤独
ケンジ「はあはあ・・・」
ここはある工場跡地。
なぜこんな所に逃げてきたのだろう。
そもそもなぜ逃げているのだろう。
軍用ロボット「目標ヲ発見、追跡ヲ再会シマス。」
軍事用ロボットが軋む音を立てながら、ゆっくりと近づいてくる。
進むたび心臓の鼓動が速くなっていく。今にも破裂しそうだ。
ケンジ「くっ!」
圧迫感に耐えられず、飛び出す。
目の前には目が真っ赤に光るロボットが立っている。
そこには恐怖や絶望などではなく、「狩られる」という事実だけがあった。
軍用ロボット「ピピッ、目標を撃破シマス。」
ロボットの左腕から煙が吹き出す。
ちょっと待て、撃破だと?わけがわからない。
逃げなければ・・・だが体が動かない。
ただ立ち尽くす。体が死を受け入れているようだ。
次の瞬間凄まじい音が鳴る。
撃たれたのか・・・?
自分の胸に触れようとするが何も触れない。
その時気づいた。自分の体に大きな風穴が開いていることに。
その事を認識した瞬間猛烈な痛みに襲われる。
いいや、痛みなんてもんじゃない。生き地獄だ。
次の瞬間走馬灯が流れた。
しかし驚いたことに全て自分とは違う人物のものだ。
おかしい・・・しそんなことを考えていたら、目の前が真っ白になる。
ここは天国なのか、はたまた地獄なのか。
謎の声「起き・・・起きて!」
ケンジ「はっ!」
ゆっくり目を開くと、そこには全く知らない人物がいた
ケンジ「ここは・・・?」
謎の声の正体「僕の部屋だよ」
意識がはっきりすると、自分の状況がわかった。
今自分はベットに横たわっており、この人に助けてもらったようだ。
胸に手を当てると、風穴は完全に塞がっていた。
だが手当どころか傷の跡すらない。夢だったのだろうか。
謎の声の正体「大丈夫?工場の跡地で倒れてたけど・・・」
ん?夢じゃなかったのか?
まさか・・・じゃあなぜ傷がないのだ・・?
ケンジ「ああ・・・大丈夫だ、ありがとう。君、名前は?」
トオル「サクラマトオル。トオルって呼んで。」
ケンジ「トオルか・・・俺はケンジ。」
そろそろ起きないとな。
起きあがろうとするが、動けない。
疲れてしまったのだろうか。
トオル「無理しないで、今日は泊まっていきなよ。」
ああ、なんて優しいんだ。
こんなにも優しい人間がいたなんて。
冷えていた心が一気に暖かくなる。
しかしなぜだ?なぜ胸の傷が癒えているのだ?
おかしい・・・根本的におかしい。
そもそも何も思い出せない・・・
俺はどこで生まれて、どこで育ったんだ?
・・・思い出せない。名前だけわかる。
こんなことあり得るのか?
ファンタジーの世界じゃないのだから・・・
今日はもう寝よう。考えても無駄だ。
ケンジ「すまない、もう寝ていいか?」
トオル「わかった、おやすみ。」
トオルが部屋から出ていき、静かになる。
何だろう、この安心感。
いつぶりだろうか・・・
そのまま眠りにつく。
ケンジ「・・・ん?」
ここは夢の世界か?
すると、目の前に女性が現れる。
何処かで見たことあるような気がする。
思い出そうとしていたら、その女性が離れていく。
ケンジ「待ってくれ!聞きたいことが・・・うっ・・・目眩が・・・」
それで夢は途切れる。
夢から覚め、日差しを浴びながらゆっくり目を覚ます。
そこにはトオルが立っていた。
トオル(どう?よく寝れた?)
ケンジ「ああ・・・よく寝れた。ありがとう。」
トオルの顔は明るくなり、喜んでいるようだ。
本当に天使か何かなのだろうか。
しかし、あの女性は一体誰なのか…
第一話 完
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