第2話 ロリコン疑惑

森を抜けた先、視界が開ける。


そこには、石畳の道と木造の家々が並ぶ、小さな村が広がっていた。




朝靄がまだ残る村の空気はひんやりとして心地よく、朝日が屋根の上を照らしながら優しく村全体を包み込んでいる。




「……ここは?」


「グラント村です。私にとっては故郷のような場所ですわ」




テラは笑顔で答えながら、軽やかに草道を進んでいく。


俺はそんな彼女の小さな背中を見つめつつ、後を追った。




しかし――




「おいそこの男! その子をすぐに離れろ!」


不意に、怒鳴り声が飛んできた。




「へっ?」




振り向くと、銀髪に白いヒゲをたくわえた長身の男がこちらに走ってきていた。


その姿は老いを感じさせたが、腰に携えた大剣と鋭い眼光は、かつての猛者の名残を感じさせた。




「は、はい!なんでしょうか!!」


気迫がある怒鳴り声で体がピンッとなってしまった。




「子供を誘拐とは、貴様を逮捕する!」


「ち、違う! 俺は誘拐なんて――」


「問答無用! このロリコンめ!」




「うぉぉぉい!!? なんでそんな即断すんだよッ!!」


「あらあら、セバスさん?我が子に何をしているのですか?」




その瞬間、テラの静かでどこか恐ろしい声が聞こえた。


そして銀髪の男の目が大きく見開かれる。




「っ!? こ、この御声……まさか……」




男はテラの前で、ひざまずいた。


「まさかテラ様でしょうか!」


「はい♪ ハルト様と共に歩むための姿ですの」




俺はポカーンとするしかなかった。




「……え、えっと、俺は無実になったのかな?」




「……無礼をお許しください、ハルト様。わたくし、セバス・グレイヴと申します。この村で警備と雑務を任されております。以後、お見知りおきを」




こうして俺はセバスという男に開放してもらったが、周りの視線がとても痛かった。


おそらくここの村人だろうが、ロリコン野郎だったり顔はブサイクな癖にとか聞こえる。


っておい!顔は違うだろ顔は!




人混みの中から白く長いヒゲを伸ばした老人が出てきた。


「これはこれは、テラ様。第二次聖戦以来ですな」


「あら~、マルク久しぶり!貴方老けたわねぇ」




テラがマルクという村長と握手していた。




「マルク!あの子が私達の希望の光であるハルトよ」




テラが俺を紹介した。




「ほうほう、いい男じゃな。わしが若い頃に似ておる」


「あの子のほうがイケメンよ?だって私の大切な子供だもの」


テラが”自分の子供”というと周りから感動する声がした。




「……いやいや、なんでここで”我が子”設定が確定してるんだよ!?」


そう反論すると知らないうちに後ろからテラが抱きしめていた。




「まぁ♡、お母さんと一緒だと恥ずかしいのよね?」


「ほう!溺愛しとるのか!テラ!」




村長や村人から笑われてる……


ある程度落ち着いたあと、村長が言葉を発した。




「まあテラ様がここにお越しになったということは何かあるのですな?」


「そうよ、マルク。少しこの子と一緒に3人で話せるかしら?」




そう言うと村長の目は真剣な眼差しとなり、セバスに指示を出した。




「セバス、わしの家に誰も入れないようにしてくれ」


「分かりました。お任せください」


「他のみんなも分かっとると思うが、セバス以外の帝国の人間に伝えるな!」




そうマルクは言うと皆は頷き何事もなかったかのように散らばっていった。




「それじゃあ、テラ様とハルト様。こちらへ」




こうして俺とテラは村長の家へと向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る