小さな思い出

H0C0L1

第1話 白い朝

……

 白い朝のひかりが、ひとのかたちをした小さな至上者の髪をやさしく照らしている。

 その髪は、ふうわりとして、雪をうすく溶かしたあとの霧のように、そっと揺れていた。


 至上者は黙って、その頬を寄せた。

 かすかにくすぐったい、やわらかな肌の感触が胸もとへ沁みてゆく。

「MISHA、くすぐったいよ」

「……うん」

 そのこたえは、どこか遠い雲の上から降ってきたように、おだやかで、すこし不思議だった。


 しばらく、ふたりはそうしていた。

 けれども、どうしても胸の奥がひりひりとして、もうじっとしていられなかった。

 少年は小さな肩をそっと放して、両の手で頬を包んだ。


「?」

 小さな至上者が大きな目をひらいて、あどけなくこちらを見上げる。

 白い睫毛の奥に、ひとつのやさしいひかりが瞬いていた。

 少年はそれを見つめながら、小さな声でつぶやいた。


「……あぁ、本当に。君はどうしてこんなに可愛いんだろう」

「ぼくは可愛いじゃないよ。MISHAだよ」

「そうだね。君はMISHAだ。世界で、いちばん特別な子だ」

 声はすこし震えていた。

「……だから、心配なんだ」

「?しんぱい」

「そう。君の特別さのせいで、いろんな理由をつけて、君を狙う者がきっといる」


「ねらう……いたいこと、するの?」

 その瞳がふるえて、小さな肩がそっとすくんだ。

 少年は急いでその頭を撫でてやった。

「……うん。そうだね。君を傷つけようとする人もいるだろう」

 白いまつ毛がぴくりと揺れて、至上者は怯えたように息をのんだ。

 少年はそっと指を重ね、やわらかく言った。


「でも、僕がそばにいるじゃないか。絶対にそんなこと、させないよ」

「……うん。しってる」


 その声は、朝の光にとける雪のしずくのようだった。

 至上者はそっと彼の手を取った。

 少年は少し驚いた顔をして、それからすぐに微笑んだ。

 ふたりの手のあいだに、あたたかなひかりがひらいて、ゆっくりと溶けていった。

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