商人と鍛冶屋と冒険者たち

迷宮都市ファルス——。

門をくぐったカイルの視界に飛び込んできたのは、混沌と活気が交錯する巨大な都市の姿だった。


道は石畳で舗装され、両脇には所狭しと商店が並んでいる。

香辛料や肉、魚などの匂いが混ざり合い、異国語が飛び交い、屋根の上ではピクシーたちが何かの荷を積み下ろしていた。

荷車を引くケンタウロスに、店の鍋で煮込みを売るドワーフの女将さん。

そのすべてが、迷宮都市という「日常」を生きていた。


「……すごい……」


カイルは圧倒されつつ,この喧騒のなかを歩いた。

農村では見たこともなかった光景。しかし、この混沌こそが冒険の始まりを予感させていた。


無意識のうちに剣の柄をそっと握る。

すれ違う冒険者の誰もが、自分よりも強そうに見えた。

片腕が義手の男、巨大な弓を背負ったエルフの女性、全身を黒布で包んだ魔導士らしき者。

彼らも、初めは自分と同じようにここに来たのだろうか。


ギルドへ向かうにつれ、通りには装備屋や鍛冶屋が目立ってきた。

金槌の音が響き、ドワーフ職人たちが鋼鉄を打ち鍛えている。

職人たちの熱気に押され、立ち止まっていると店員が声をかけてきた。


「なにかお探しかい、若いの! その剣、そろそろ柄革も替えた方がいいな」


「え、あ……いえ。今日は……見るだけで」


「あっはっは! 最初は皆そう言うのさ。いずれ戻ってくることになるさ、迷宮帰りにな!まぁ必要になったらうちの店に来てくれよ。」


鍛冶屋のドワーフが豪快に笑い、また別の剣を炉に入れていく。

カイルはあっけにとられながら店先を離れた。


(……道具も、技術も、村とは何もかもが違う。やっぱりまずはギルドかな)


その思いを胸に、カイルは迷宮都市の心臓部へ向かう。

そこには——冒険者たちの拠点、《深淵の環〈アビス・サークル〉》がある。

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