第37話
「魔王様。ケルビンがやられたようです。それもかなり簡単に倒されたようで、敵は手練れと推測できます」
「……」
魔王は部下の報告を聞いたが、一切表情を変えなかった。
現在彼女たちは、グラス島中央にある研究施設の中にいた。
元々学者がグラス島の動物や植物を研究するために作られた施設だ。
SSランクの魔物出現を知った職員は全て避難しており、今は魔物達の巣窟となっていた。
「人間どもが我らを討伐しにきたようですが、いかがいたしますか?」
「弱い魔物には捜索を続けさせろ。この島に来た人間は、捜索の邪魔になるからここにいる誰かで倒してこい。なるべく殺さないようにな」
魔王は淡々とした口調で命令を出した。
捜索任務は弱い魔物をさせており、魔王の傍に残っているのは、いずれも強い魔物達だった。
「私が行きます!」
最初に挙手をしてそう言ったのは、額にハチマキを巻いた女だった。
見た目は人間に近い。耳が長く、とんがっているくらいしか、人間と異なる点はなかった。
武闘家が着るような稽古着を身につけている。
「ライラか。やるというなら任せよう」
「お任せ下さい! 魔王様の敵をボコボコにしてきます!!」
ライラと呼ばれた魔物は、魔王に任されて嬉しそうにそう言った。
ここにいる魔物達は、魔王のことを恐れてはいるが、心底慕っているものはいない様子だったが、ライラは例外だった。
「あと一人は欲しいな。誰が行く?」
魔王の問いかけに魔物達は静まり返った。
魔物たちは困惑したような表情で、ほかの魔物の出方を伺っている。
明らかに行きたくないという様子だ。
ライラ以外は魔王に忠誠を誓っているものはいない。怖いから従っているだけだ。
ケルビンは魔王配下の中では弱い魔物ではあるが、それでも配下になるくらいなので最低限の実力は兼ね備えている。
この場にいる魔物達でも、簡単に倒せる魔物は少ない。
それを簡単に倒した人間と戦うとなると、敗北の可能性もある。
慎重になるのも無理はなかった。
「俺が行きますぜぇ」
沈黙を破ってそう言ったのは、腕が六つある男だった。
腕が多いだけあって胴体がかなり長い。足が短めなので、変なスタイルだった。
「ギルグゥ……」
「あいつが……?」
魔物達は困惑していた。この状況で手を彼が立候補するのを意外に思っているようだった。
ギルグゥと呼ばれた魔物は、魔王の目の前に歩いていく。
「殺すなと言われましたが、間違って殺しちまうかもしれないが、それは別に構いませんかねぇ?」
ニヤリと笑みを浮かべながらギルグゥは尋ねた。
「わざとじゃなければな」
「わかりやした。流石に絶対に殺すなと言われちゃぁ困りますかんね。俺の場合は」
魔王の返答を聞き、ギルグゥはさらに嬉しそうにする。
「決まったな。ライラとギルグゥ。人間どもを倒してこい」
「はい!」
「りょーかいぃ」
ライラとギルグゥの二人は魔王の指示を受け、人間の討伐に向かった。
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