第10話

「そ、そんなに大事なのこの湖」

「もちろんだ。ここ以上の釣りスポットは中々ないからな」


 釣りをしていた場所に戻り、ラジオをつけようとする。

 何か情報を聞けるかもしれない。


「犯人捜しをするの?」

「ああ。とっつ構えて、あの湖を元に戻させてやる」

「……もしかしたら私、犯人が分かったかもしれないわ」

「何?」


 エミルは高位の冒険者だ。

 もしかしたら俺の知らない魔物の情報を知っているかもしれない。


「教えてくれ」

「……あの、奇妙な塔と、あの爆発……あんな魔法があるとは私は聞いたことないし……そこで思ったんだけど……あれは……魔物の仕業だと思うの」

「……何の魔物だ?」

「そこまでは分からないわよ。でも、魔物の仕業なのは間違いないわね」


 まるで世紀の大発見をしたかの様な、得意げな表情を浮かべながらエミルは言った。


「あのな……その程度の事は誰だって分かんだよ」

「え? まさか気づいてたの?」

「当たり前だ。だからラジオを聞こうとしてたんだろ」

「さ、流石ライズね……ってあれ? 音魔法受信具の事らじおって呼んでるの? そんな呼び方があるのね。知らなかった」


 ラジオというのは、前世の知識からそう呼んでいるので、俺以外に同じ呼び方をする者はいない。


 しかし、エミルに期待した俺が馬鹿だった。

 無駄に時間を使ってしまった。

 もしかしたら、今の無駄な会話をしているうちに、求めている情報を聞き逃してしまったかもしれない。

 慌ててラジオをつける。

 ラジオを操作し、ニュース番組をやっているチャンネルに、周波数を合わせた。


『えー続いては、最近起こっている変わった事件の情報です。ここ最近、各地で奇妙な模様の建物が数件見つかっております。今のところ中に入った人もおらず、特に被害も出ておりませんが、この建物は高位の魔物が建造した物であるという疑いがあります。危険ですのでもし見かけても入らないようにしてください。また、冒険者の皆様は分かっているとは思われますが、魔物の建造物に侵入するのは、相手のテリトリーに入ることとなり、大変危険です。建物を建造した魔物はAランク以上である可能性が高いので、よほど腕に覚えのある高位の冒険者様以外は、立ち入らないようにしてください』


 これは……


 間違いない。湖にオブジェを立てた魔物だ。

 まだ被害は出ていないので、魔物速報は出ていないようだが、気持ち悪い建物を各地に建てたということで、ニュースにはなったようだ。


 それから、建造物が見つかった場所が読み上げられる。


 俺はそれを紙に書き残した。


 ここから結構近い場所だった。

 湖に塔を建て魔物と、同じ魔物の仕業だろうから、当然ではあるだろう。


「……ニュースを聞いて思ったんだけどさ……もしかしてたら、湖に奇妙な建物作った魔物と同じ奴なんじゃない?」


 エミルがしばらく考えてようやく気付いたようにそう言った。

 

 察しが悪すぎるだろこいつ。


 とにかく、絶対に犯人は捕まえてやる。


 俺はそう決意し、犯人捜しのための準備を始めた。

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