3.それはホントにオレなのか?
学校終了、即ゲーセン。
今日こそ限定エリアでスコア稼いで次の楽曲をアンロック!
っていう放課後のハッピータイムが……どうしてこうなった?
店内に入ると、空いてる筐体発見! 見た目は洗濯機の音ゲー。
これがまた、腕滑らせたり、肘駆使したりと、体力勝負。
上級プレイは見てるだけで鳥肌。神曲も多い。
今度、動画検索で『waiwai 神プレイ』って打ってみ。神チューバーのプレイが大量に出てくるから。
さてクレジット、……の前にIDカード。
……ん? ……ない。
服のポケット、カバンの中も全部漁る。出てこない。忘れた? 無くした? マジ?
うっそだろ。イベント! 週末までに称号取れんのか?
カード再発行……は、家ん中探してからか。カード代よりプレイに多く回したい。
仕方ねぇ。今日はゲストで。
うぉぉぉ、新譜、らっこさんのやつ! マジか。
この人、タイトルと演出がエモくて合うんだよ。expの譜面見てぇ。
最初の演出だけでゾクっとするねぇ。
開幕からのいきなり6つホールドっ……からのスリップ連続は 無理ぃ! 腕も指も逝く!
ちょっノーツ流れんの早っ!
ハネのタイミングズレ……何ぃ、ここ落とすと全部ズレんのか!
お、バースト来た! ……それナシ!……あぁぁぁー
スコア見る前に、消去。怖すぎ。
「……ちげぇ。カードないから、ちょいなめすぎただけだし」
今日はカードのせいって事で、帰ってカード探そう。
そろそろ7時。コンビニで適当な夕メシを買って、家で食う。
ちなみに、オレ門限なし。
両親は仕事の都合上、海外赴任中。送られてくる生活費は極限までゲームにつぎ込める。
いい家に生まれたわ。
途中で通る赤い屋根の家。オレ本来の自宅だ。ここ半年、電灯が付いていない。一時帰国した母親が荒れっぷりにキレて、近所に四畳半の部屋を借りることになった。
今じゃ、別宅の方が落ち着く。
けど、なんだかんだで寄り道して見に来てんだけどな。今度あそこに電気がつくのは、いつのことやら。
「……ガラじゃねーか」
まぁ、防犯を兼ねてって事で……。
引き返して脇の細い道を通り、近道。公園をショートカット。
わりとでかい公園。昼は賑やか。夜は薄暗い外灯が四、五本立っている程度。22時を過ぎると色々な意味で刺激が強かったりする。特に、大人の関係。今はまだ19時回ったとこ。……ちょい残念。
……と思ったら。
植え込みを挟んだ向こう側、外灯の下にあるベンチで、背を向けて話している男女発見。
女の声、幼め。声の割にトーンは落ち着いていて、アンバランスな感じ。
「どうする。これから?」
「……今、考えてる」
……これも、やっぱりノゾキ行為になるんだろうか。
「だって」
小さいくせに、よく通る声だった。
「——ショースケだったよ? 絶対」
一人が興奮気味に立ち上がるのを、もう一人が宥めた。
……ショースケ? 他人事な気がしねーな。
と、そのとき、横顔が明かりに照らされた。
思わず、声を上げそうになるのをなんとか我慢する。
「……でも、ボクらを知ってる、感じじゃなかったよ」
黒いシャツが、揺れた。
そいつは、夕方のガキだった。
ってことは、もう一人も。
「うん。あんな表情、見たことない。……ねぇ聞いてる? タクト」
やっぱりあの女子だよ。ガキはタクトというらしい。
「うん、ボクも、そう思った。だから、あの人じゃ、ないんだよね。そっとしておこう」
「……じゃあ」
取り乱すように頭を振った後、女子が続けた。確か……そうだ、レイって呼んでた。
……あの人って、オレのこと、だよな?
「じゃあ、ショースケはどこ行っちゃったの」
レイの声は、風の音にかき消されそうなくらい小さかった。こうして見ると体もそんなに大きくない。見た目とは裏腹に、精神的に追い込んでくるギャップがヤバい。思い出しただけで、口元が変に落ち着かねぇ。
「もう一度、こっそり覗いてみる? 住んでる、所だって、前と、変わらない、みたいだよ?」
タクト、切るとこがおかしいな。息遣いがちょっと荒い。
レイは、罰ゲームを拒むような言い方で叫ぶ。
「……いや! 見たら絶対許せないもん!」
どんだけ嫌われてんだよ、オレ。
……ここはもう一人のそっくりの方か? よくわかんね。
「だから、それが、ショウ——ショースケが」
淡々とした口調で、タクトは言う。
「消されたって、ことだと思ってる」
……一瞬、耳を疑った。
何、今の。聞き違い?
更に、音を立てないように植え込みに潜る。
なんか、心臓の音がすげぇ近い。
「だから、あの人にはかかわらない方が、いいんだ」
「え、でも、消えたわけじゃなくて……」
やっぱり、消された、って言った!?
何の会話だよ。しかも、消えた事になってる奴って……オレ?
消すって、ヤバい意味にしか取れねぇ。
心拍、無茶苦茶早ぇ、止まんねー。
「この後……」
意味ありげな事を言うのかと思いきや。
オレの脇腹あたりから、よく言う蛙の鳴き声を潰したような音がした。
「!」
そこで鳴るか? 空気読め。
慌てて手で押さえたら、茂みに思いきりぶつかり、葉っぱがザワザワ擦れた。
数秒おいて、一人がこちらを振り向いた。
バレた。絶対。
「タクト?」
「……行こう」
行っちまう。聞かなきゃ、消されたの続き! 聞くからにヤバそうな話。
聞いたら後悔すっかな。とか思ってるオレがどこかにいる。
ここを逃したら取り返しがつかなくなる予感もあった。
迷ってる暇なんてねぇ。
……それなら。
聞かない後悔の方が、何倍もでかい。
「ちょ、待てぇ!」
勢いに任せて、オレは植え込みから叫びかけた。心臓は相変わらずで、足はガクガクだった。
「お前ら、ずっと聞いてたぞ! オレが消されたってどういうことだよ?」
「……ショースケ」
女子は呟いて、意外そうな顔をオレに向けた。かと思うと、次の瞬間には逃げるように走り出す。
「逃げんなっ!」
追おうとして、数秒もしないうち、タクトがバランスを崩して躓き、転んだ。それっきり、起き上がる気配がない。顔が青白く、額の汗が滝みたいに溢れている。
鬼ごっこは、その場であっけなく終わったんだ。
後から振り返ってみると、この出会いがもう一人のオレとの境目だった。
まぁそんなもの、この時のオレは気づくわけもないんだが。
___________
ここまで読んで下さった方、
読むのに時間使ってくれてありがとうございます。
ここまで来てくれた人、ぜひ感想や星で声をお聞かせください
ハート、コメント、星など頂けると励みになります。
貴方の声で、ストーリーが変わることもあるかもしれません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます