Day23 探偵 (鰺坂、中嶌)

 ここでもない。あそこでもない。

 中嶌が研究室に来た時には既に、鰺坂は研究室の棚を開けては閉め、開けては閉めを繰り返していた。いつも中嶌より早くに来て遅くに帰っている彼女は、今朝からずっと探し物をしているらしい。

 合間に実験も進めつつ、そろそろ昼が近くなってもまだ探し物は終わらないらしい。

「鰺坂さん、机は?」

 もう既に探したかもしれないが、机を探している姿は見なかったような、と声を掛けてみれば、えー、と不満げな声と共に、引き出しを開けては閉める音がし始める。

「机? 全部見たつもりなんだけど……あ、あー、あ~~~」

「よかったです」

「……いつから安楽椅子探偵になったの、中嶌くん」

「えー?」

 その日、珍しく弁当を持ってきていなかった中嶌は、鰺坂に学食ランチを奢ってもらった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る