第19話 ふるさとをはなれても



ふるさとをはなれても


うまくできると思ってた



でもちがった



それは、かいかぶりだった

わたしには、その能力がなかった



いつでも帰れると

そう思っていた


でも、ちがった



ひとたび、かえれば、

もどってこれなくなるのが怖くて

帰れなかった、ふるさと…


でも、もう、おそい


街はすこしずつ変わって

人も、風景も、

なにもかもが少しずつ遠ざかっていった



ただ、あのときのわたしだけが

まだ、そこに立ち尽くしている



帰る場所を失ったのか

それとも


帰れる「自分」が、

どこかに行ってしまったのか


そのどちらなのかなんて

分析して考えてるうちに



本当にもう帰れなくなってしまった


懐かしささえ

今では、痛みに変わる



けれども

心のどこかに、まだ灯りは消えていない



消えそうでも、消えない、

こころのともし灯

なつかしさ



それが、ふるさとなのか

それとも、ふるさとを懐かしんでいる、

わたし自身なのか



どちらなのかは、

もうわからなくなってしまった



もう少しだけ

もう少しだけ


何回も何回も反芻する問い



でも、思い返せば



何か大切なセンターピースが抜け落ちたままのわたしは…



それはそのままに…



また反芻する…





~~




サザンオールスターズの慕情の曲とともに


ふるさとを後にした


あの日にはもどれない…















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