【第7章:未来の記憶】

冬休みが近づく。


街にクリスマスソングが流れ、浮かれる人々の中で、直樹の焦りは募っていた。


洋子と隼人の“あの日”が近づいている。


「このままじゃ、また同じことになる……」


彼は思い出していた。


卒業式の日に、どこかで耳にした、あのニュースの断片。


高校生二人が転落死。事故か、心中か。


状況は不明。詳細は報道されず。


けれど、知っている。あの日、あの橋の下で冷たくなっていたのは洋子と隼人だった。


直樹の脳裏に、ふたりの笑顔がよみがえる。


(俺は……絶対に、同じ未来を繰り返させない)


彼の決意は、冬空の下、強く燃え上がった。


そのとき、ふと、京子の存在が脳裏をよぎった。


洋子と隼人、ふたりの周囲にいたもうひとりの少女——京子。


以前、どこかで感じた違和感。


彼女の微笑、やさしさ、気遣いの裏に隠された、もう一つの顔。


(もしかしたら……京子が何かを知っている)


その直感は、直樹の背筋を冷たくさせた。


「京子……君も、この運命の鍵を握っているのか?」



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