燃え残るもの

 写真を燃やそうと思った。

 けれど、なぜか火がつかない。

 ガスコンロの火が、写真の端に触れても、ただ炙られているだけだった。


 無理にライターで端を焦がすと、周囲から焦げた紙のにおいとともに、濡れた土の匂いが立ち上った。


 ――おかしい。これは紙が燃えた匂いじゃない。


 それは、霊園で嗅いだ、掘り返された墓土のような匂いだった。



 やがて写真は火に呑まれていったが、

 女の顔の部分だけが最後まで燃えなかった。


 紙は丸まって灰になっても、彼女の目の部分だけが黒く焦げ残り、じっと俺を見ていた。

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