第12話 爪


 本日2話目。

 お間違えないように。


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 誰かにがっつり見られながらの投球。

 最初は気になってたけど、ずっとやってるうちに、全然気にしなくなって。


 いつも通りゆっくりと練習を続けた。

 途中、夫婦はネットの裏に行ったりもしたが、それも些細な事だ。


 バッターが居る位置に立ちたいって言われた時は、流石にお断りしたけどね。俺は自分のコントロールに自信がないのだ。


 万が一にでもお客さんに当ててしまう可能性があるなら、許容出来る筈がない。コントロールのステータスがSでも断ってただろうね。


 ゲームのコントロールSでも、本当に偶にすっぽ抜けるのだ。まだDしかない俺じゃあ、本当にドカンとやってしまうかもしれない。


 まあ、伸二は偶に立つんだけど。


 「いやぁ、良いものを見せてもらった」


 球数が50球を超えた頃。

 そろそろ終わりますと、夫婦に告げると、二人はニコニコしながらこっちにやって来た。


 特に旦那さんの方は大興奮。

 どこどこが良かったとか、滅茶苦茶詳しく言ってくれるのだ。この人、相当野球好きだと思う。


 良かったと言ってくれたところは、これまでの練習で、全部伸二がこうした方が良いって言ってきたところだ。


 俺にとっては、伸二が褒められたのと一緒の事で、とても嬉しい気持ちになった。


 そうなんです、うちの弟は天才なんです。

 将来的には俺と一緒にこの旅館を切り盛りするって言ってくれてるけど、もっと都会の方に行ってその能力を発揮した方が良いんじゃないかなって思ってたりする。


 この狭い島じゃ、伸二の才能がもったいなすぎるよね。まあ、本人にその気がないみたいだから、俺としては何も言えない。


 両親が引退したら、伸二が旅館を継いで俺がそれをサポートするって形が良いかな。


 「ん? ああ、これからも投げるなら爪の手入れもしておいた方が良いな」


 「爪ですか?」


 「ああ、ピッチングは爪も重要だぞ」


 なんて内心で弟自慢をしてると、旦那さんの方が握手を求めてきたから、普通に応じると、俺の指をパッと見てとても気になる事を言ってきた。


 俺は爪が伸びてきたらすぐに切るタイプだ。旅館の手伝いをする事もあるし、伸ばしすぎるのは衛生上よろしくない。


 何回も切るのが面倒だから、深爪しちゃうタイプでもある。


 「爪は最後のボールのリリースの瞬間、指の腹でボールを押し出す圧力を支える役割もあるんだ。ボールの回転数にも微妙に影響してくるしな」


 「なるほど……」


 「爪切りを使わずにやすりで整えるのが良い。ネットで調べたら普通に出てくると思うから、良かったら参考にしてくれ」


 「貴重なご意見ありがとうございます」


 「なあに。良いものを見せてもらったお礼さ」


 これは良い事を聞いた。

 指先の感覚は大事にしてるつもりだったが、爪にまでは頭が回ってなかった。


 早速帰ってから伸二と一緒に調べてみよう。もしかしたらこれで157kmも投げられるようになるかもしれん。


 夫婦はその後も少しだけ話した後、旅館に帰って行った。


 「相当野球好きな夫婦なんだろうなぁ」


 「そうだね。旦那さんの方はやたらと熱心だったけど……」


 伸二とお片付けをしながら喋る。

 結局最後までずっと見てたし、終始興奮してる様子だった。ずっと目をキラキラさせて少年みたいだったもん。


 俺達もステータスの事で試行錯誤してる時はあんな感じなのかもしれん。



 そんな事を思った翌日。

 今日も休日の俺達は、朝からいつものように砂浜にやって来た。


 爪の手入れも昨日から色々調べて始めた。

 まだ全然伸びてもないから、効果はまだ実感出来ないだろうけど……。1.2週間後ぐらいが楽しみだな。


 しっかりと準備して海へザブン。

 俺が満足するまで泳ぐ。

 その間、伸二は色々とデータのチェックだ。


 昔はとにかくいっぱい泳ぐ為にガムシャラに泳いでたけど、投球フォームが固まってからは、身体の動かし方も気にするようになった。


 昔から泳いでたお陰か、俺は肩甲骨の可動域が結構凄いらしい。だからあの投球フォームで投げられている。クロールの動きとオーバースローで叩き付けるように投げる動きが似てるんだ。


 スタミナが勝手に上がるからずっと続けてたけど、これは本当にやってて良かったって思ったね。


 「またスタミナは上がらず。90になったらSになると思うんだが、全然上がらんな」


 必要ポイントが馬鹿みたいに多いから、ポイント消費で上げる気にはならない。でも、毎日泳いでると、必要ポイントが偶に下がる事がある。球速やコントロールなんかも同じだ。


 まあ、成長はしてるんだろうな。

 それを実感出来るだけでも、このステータスはありがたい代物だ。


 そんな事を思いながら海から上がると、伸二の隣に二人の人影が。


 「あの夫婦。また来てるのか」


 昨日の野球好き夫婦だ。

 旅館に帰った後は、どこにも行かずにゆっくりしてたっぽいけど、今日も観光に行かずに俺達を見てる。


 旅行しに来たんじゃないの?

 観光より素人の野球風景が気になるって、筋金入りの野球好きじゃん。


 「どうもー。おはようございます」


 「ああ、おはよう。二人は朝が早いな」


 「まあ、旅館の手伝いとかもありますので…」


 今は朝の8時くらいだ。

 いつも6時くらいに起きて、旅館の諸々を手伝って朝飯を食べてから砂浜に来てる。


 砂浜で泳いだり練習をした後は、また旅館に戻って、出て行ったお客さん達の客室の掃除やらの手伝い。それが終わったらまたご飯を食べて、少しお昼寝。


 お昼寝から起きたら、また何かを食べて、砂浜にやって来てトレーニング。その後にマウンドに行って、投球練習をして、軽く何かを摘んで、また旅館のお手伝いをして、晩飯を食べて1〜2時間ダラダラしてから就寝だ。この1〜2時間で色々調べ物をしてる事が多い。


 これが俺達の休日のスケジュールだ。

 学校のある日はここまでがっつり手伝いや練習もしてない。


 なんて事を雑談の中で夫婦に伝える。

 休日のそこそこハードなスケジュールに驚いてたけど、慣れたらどうって事ない。


 スタミナはあるし『回復』のスキルだってある。多分平気なのはこのステータスのお陰だ。伸二はトレーニング中は動いてない事もあって、余裕があるしね。


 練習はともかく、将来はこれをほぼ毎日やる事になるんだ。今のうちから仕事を覚えておいても損はない。


 「趣味の範疇を超えてると思うが…」


 「やるなら徹底的にやった方が面白いじゃないですか」


 偶に妥協したくなる時もあるけどね。

 鬼軍曹の伸二が許してくれません。

 多分、一人なら結構妥協しまくってたと思う。


 伸二が面白がって付き合ってくれたから、ここまでステータスを成長させる事が出来た。


 ほんと、ありがたいよね。



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 朝起きたら星がめっちゃ増えてた。

 作者嬉しい、嬉ション不可避。

 嬉しいから明日も2話更新すると思います。

 だから、まだの人は是非是非、作品のフォローと星をポチッとよろしくね。


 オムツの準備をしておきます。

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