第4話 特別って、どういう意味?

放課後の教室はほとんど空っぽだった。

俺と氷室詩織だけが残り、二人きりで机を並べていた。


「ねぇ、神谷くん」

「ん?」

「“特別”って、どういう意味か知ってる?」


急に詩織が真顔で聞いてきた。


「え、“特別”?

うーん……なんだろうな。

普通じゃないこと、かな?」


詩織は少しだけ首をかしげて、でもすぐにいつもの無表情に戻る。


「私ね……神谷くんにだけは、いつもと違う感情が湧くの。

誰にでも見せない顔を、あなたにだけ見せてる」


「……え?」


俺は正直、理解できなかった。

だって、クールな詩織さんがそんなこと言うなんて。


「あなたは私にとって“特別”な存在。

だから、普通じゃない態度をとってしまうのかもしれない」


俺はその言葉に動揺した。

“特別”って……俺のこと?


「神谷くんは、気づいてないかもしれないけど、私の中で一番大切な人なの」


そう言って、詩織は初めてほんの少しだけ笑った気がした。


「……俺も、そんな“特別”になりたいよ」


言いながら、心が震えた。


詩織は俺の目を見て、ゆっくり頷いた。


「じゃあ、これからも私と特別な関係でいてくれる?」


「ああ、もちろん」


屋上で交わした約束は、もう単なる友達のそれじゃなかった。


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