第2話 "恋愛"って、何ですか?

次の日の昼休み。


俺はいつものように屋上へ向かっていた。

だが、心なしか足が重い。昨日の氷室詩織の言葉が頭から離れない。


――「恋ってどういうものか、体験してみないと分からないでしょ?」

――「私が教えてあげる」


教えるって、どうやって教えるんだ?

まさか、恋の“レッスン”とか始まるのか?


屋上のドアを開けると、彼女はもうそこにいた。

昨日と同じベンチに座って、本を読んでいる。


「……来たわね」


「うん、来たよ。でも、正直まだよくわかってない」


彼女は顔を上げて、俺を見つめた。


「わからなくて当然。恋愛っていうのは、言葉で説明できるものじゃない。感じるものよ」


「感じるもの……?」


「例えば、胸がドキドキしたり、頭の中がぐちゃぐちゃになったり、時にはバカみたいに考えちゃったり」


「……それ、なんか厄介だな」


「そう。だから、ちゃんと教えないと。まずは“恋の気持ち”を知るところから」


詩織はゆっくり立ち上がり、俺の目の前に来て言った。


「今日のレッスンはこれよ。観察。」


「観察?」


「そう。私があなたのこと、じっくり観察してるから。あなたも自分を見つめ直して」


正直、意味がよくわからなかったけど、何か面白そうでもあった。


「わかった。やってみるよ」


その後、屋上での時間はいつもより静かに過ぎた。

俺は自分の胸の動きを、意識しながら詩織の隣に座った。


「ねぇ、神谷くん」


「うん?」


「次のレッスンは……デートの予定を組むことにしましょう」


「え?デートって……!?」


その日から、俺の恋の“レッスン”が始まった。


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