第5話 魔力の研究ーチャクラ(魔力結節点)について。
魔力回路の生成作業は順調だった。全身に張り巡らせた見えない管は俺の意識の赴くままに魔力を流し、以前よりも格段に魔力操作の精度を向上させてくれた。そして、その過程で発見した魔力結節点。前世の知識で言うところのチャクラだ。
実際に体内で確認してみると、これがまた面白い。複数の魔力回路が複雑に絡み合い、膨大な魔力を効率よく分配する役割を担っている。これは利用しない手はない。
俺は赤ん坊の体に不便しながらも、全身の魔力回路を完成させた後、七つの主要な魔力結節点の解析に着手した。神経感覚統合異常の能力が火を噴く瞬間だ。
なんだかんだ数か月ほど時間を使わざるを得なかったのはナイショ。
まず最初に取り掛かったのは、下腹部。元々の大きさの魔器があった箇所だ。今でも魔力は下腹部に引き寄せられる。
スヴァディシュターナ・チャクラ、仙骨のチャクラだったか。
ここは最も大きい結節点。魔泉と魔器が存在する箇所であり、生成された魔力を体内の各所へと送り出すポンプの役割も果たしているようだ。
次に興味を惹かれたのは、脊柱の基底部、人体の根っこのような場所だ。
ここに第一精錬魔力を集めると大地と直接繋がるような感覚がある。魔力というよりは生命力に近い、野性的なエネルギーの流入が確認できた。この結節点が活性化すると体の隅々まで力がみなぎり、物理的なタフネスが増すのが分かった。
ムーラダーラ・チャクラ、根のチャクラ。脊柱の基底部、股の間に存在する。
なるほど、前世の病で臥せっていた俺にとってはまさに願ってもない機能だ。これを常時活性化しつづけていればもし病気になっていたとしても何とかなるかもしれない。
そして、下腹部の少し上、ちょうどみぞおちのあたり。溜め込んだ魔力を一点に集中させ、爆発的な力を生み出す潜在能力を秘めている。腹の底から力が湧き上がってくるような感覚は前世で運動能力が皆無だった俺には新鮮で、少し興奮を覚えるほどだった。精神が高揚する感覚と言えばいいだろうか。
これがマニプーラ・チャクラ、太陽神経叢のチャクラだろう。ちなみに太陽神経叢を説明すると、胃の辺りにある神経の塊のことだ。人体の臓器が適切に働くように命令を出す機能がある。
胸の真ん中、心臓に近い場所にある結節点はこれまでの物理的に影響が多かった結節点とは少し性質が違った。感情と密接に結びついているようだ。穏やかな気持ちで集中すると温かい魔力が全身に広がり、逆に苛立ちを感じると、鋭い、刺激的な魔力が脈打つ。
アナハタ・チャクラ、心臓のチャクラだ。
魔力を感情と結びつけることでより繊細な操作や、他者への影響を及ぼす魔法へと応用できる可能性を秘めている。こんな箇所があるんなら、ますます洗脳魔法やら幻覚魔法があってもおかしくない。あと活性化している最中、母の愛……のようなものを強く感じることができていた気がする。
あくまで精神的なものだが、人の感情に敏感になれるのかもしれない。
恐ろしや。
続いては喉の結節点だ。ここは音と密接に関わっている。声を出す際に魔力を流すと、それが共鳴し、響きが増すのが分かる。前世で言葉を発する機会が少なかった俺にとって、声というものがここまで物理的な力を持つとは驚きである。
しかし日本では言霊なんて言葉があるくらいだし、そういうこともあるんだろうな。
ヴィシュッダ・チャクラ、喉のチャクラ。
これは音を媒介とした魔法や、聴覚を欺く幻術などに応用できるだろう。あるいは、自分の声を増幅させ、相手に直接精神的な影響を与えたり、言霊として魔法の詠唱を強化する、なんてことも可能になるかもしれない。
眉間にある結節点。ここは明らかに思考や直感、そして魔力に関係している。魔力をここに集中させると、頭が研ぎ澄まされる気がする上に、なんとぼやけた視界に魔力が映った。
アージュニャー・チャクラ、第三の目のチャクラ。
魔力視を可能とするチャクラ。これは魔術の理論構築や、新たな魔法の開発に不可欠な場所となるだろう。敵の魔力の動きを見て魔法が構築される前に回避、なんてことも可能かもしれない。正直言って革命的だと思う。
そして頭頂部の結節点。ここはまだ詳細が掴めない。
ただ、漠然とした外界との繋がりを感じる。その質はこれまでの結節点とは一線を画している。宇宙とか魂とか、そういうスピリチュアルな領域……な感じ。マジで全くわからん。
サハスラーラ・チャクラ、クラウン・チャクラ。王冠の魔力、か。
今はまだ未解明だが、最も奥深く、最大の可能性を秘めた場所であることは間違いない気がする。
ただの何に使うかもわからない魔力だったが、こうして人体に影響が現れることがわかるとますますやる気が生まれるというものだ。
7つ全てのチャクラを経由するように魔力回路を生み出し、その内部に魔力が循環するように閉じ込めることで常にチャクラを励起させ、魔力視を常に可能とし、身体の性能を向上させ続ける。
さしずめ俺の身体を○眼で見透かせばNAR○TOのSHINOBIのような魔力だまりがあることだろう。
さすがにナチュラルボーンベイビー共にこんな真似ができるとは思えん。ようやく俺はこれで絶対的アドバンテージを得ることができたと言えると思う。
だがまだだ、まだ終わらんよ。
俺の研究は行き詰るまで一生続く。
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