私服を探しに来た王女は、どうやらコスプレ衣装が気に入ったらしい

「わぁ~!やっぱり!わたくしの勘は間違い無かったですっ!こんなに可愛いお洋服がいっぱいなんて!!」

「いや……え?てか、ここって……服屋……なの?」


 ルリアに引っ張られて、彼女に追随するように可愛いの波動を発しているお店へと入店した凛音。


 しかし、そのお店にズラッと並んでいる特殊な服飾の数々を見て、彼は言葉を失った。


 店頭に並べられている商品は、分かる範囲でも端から、警察官、メイド服、セーラー服、魔女、ナース等々。ルリアの私服を買いに来たはずなのに、ドレスと系統が同じ特殊な服の類──言う所の、コスプレ衣装しか置かれていないのだ。


 だが、それもそのはずである。何故なら、二人が入店した可愛いの波動(以下略)のお店は、普通のアパレル店では無く、アニメキャラクターのなりきりセットやコスプレ用の衣装・コスチュームなどを専門で取り扱っている、最近このショッピングに開店したコスプレショップなのだから。


 キラキラが目から零れ落ちそうな程、目を輝かせて店内を見渡すルリア。凛音は、そんな彼女の手を少し引いて、


「ル、ルリア……ここはちょっと違うような……?」

「違う……?違うと言うのは……?」

「えっと、ここは服屋じゃなくて……いや、服屋なんだけどさ。普通の服屋じゃないというか……」

「……?こんなに可愛らしいお洋服が、いっぱいあるのにですか……?」 

「う~ん……何と言うか、可愛すぎるから普通じゃ無いというか、普段着に出来ないというか……」


 純粋な疑問から、首を傾げているルリア。


 何と説明したら良いのか分からず、凛音がずっと言いあぐねていると、それを見ていた女性の店員が、二人の様子を伺いながらゆっくりと近付いて来た。


「いらっしゃいませ、お客様方。何かお探しですか?」

「え、あ、いや!ちょっと間違って入っ──」

「はいっ!可愛いお洋服を探しに来ましたっ!!」


 一旦退店しようと、その旨を伝えようとした凛音。しかし、それを遮ったルリアは、笑顔で店員の質問に答えた。


 そんな彼女を見た女性店員は、一瞬ピタッとまるで雷に打たれたかのように硬直して、すぐに目を見開くと、ルリアの両手をぐいっと握って、


「か、可愛いいいいいい!!!すっごい金髪綺麗!!アニメキャラみたい!!え、お客様日本の出身じゃ無いですよね!?外国ですか!?どこの国ですか!?」


 話し掛けてきた時の落ち着きはどこへやら。ルリアの方に身を乗り出して、弾幕かの如く放たれる言葉数で、質問の嵐を巻き起こした。


 そんな店員に、凛音は顔を引きつらせながら一歩下がるも、ルリアは非常に平静な状態で、笑顔そのまま冷静に対応する。


「ふふ、ありがとうございますっ!外国……と言えば外国ですね!グロリオサ王国から来ました!」

「うんんんん!!!そこがどこかは存じ上げませんが、王女様みたいに美しいですねお客様!!」

「はいっ!実際王女なので!!」

「え……実際、王女……?」


 ルリアの言葉に、唖然として小首を傾げた店員。


 慌てた凛音は、すぐにその会話に割り込んで、


「っていう設定です!!ほ、ほら!ここってコスプレ専門店ですよね!?この子、コスプレする時は、その設定から入り込むタイプなんですよ!!ね?ルリア!?」

「設定……?いえ、私は……あぁそうでした。この世界は、転生について一般的な認知が無いんでしたね……はいっ!そうです!そういう設定です!!」


 それを聞いた女性店員は、「あー!」と納得したように頷いて、


「なるほど~!王女設定の衣装をお探しなのですね!」


 割と都合良く理解してくれた店員に、凛音は安堵の溜息を漏らす。


 しかしルリアは、その店員の言葉を聞いて、首を横に振りながら、


「いいえ。今日は、様々なお洋服を見に来たんです。私、この世界に来てから着るお洋服が無くって……」

「なるほどです!日本に来てから、コスプレする為の衣装が無いんですね!」

「はい。なので、凛音さんが買って下さるのですが、この世界には可愛いお洋服がいっぱいで、中々決めかねておりまして……」

「確かに、日本はアニメ文化が根付いているので、コスプレの衣装は多いかもしれませんね!それにしても、コスプレの趣味を理解してくれるなんて、素敵な彼氏さんをお持ちなのですね!」

「彼氏、ですか……?まぁ確かに、凛音さんはとっても素敵な男性ですが……?」


 店員とルリアの、微妙に噛み合って良そうで噛み合っていない会話を聞いていて、苦笑いを浮かべる凛音。


 最初この店に入った時は、さすがにここで私服を買うのは如何なものかとそう考えていたが、ルリアの置かれている商品を眺める楽しそうな瞳を見ていたら、もう好きなのを着させてあげても良いんじゃないかと、そう思い始めてきた。


 それに、彼女程美人で完璧なプロポーションのスタイルを持つ女性なら、何を着たって絵になるだろう。それなら、着たいものを着させてあげる方が、ルリアも喜ぶのは間違い無い。


 凛音は、女性店員の方に視線を向けると、柔らかな笑みを浮かべて口を開いた。


「あの……この子に似合う衣装、一緒に選んであげて下さい。とびっきり可愛いやつ」

「はいっ!もちろんです!!コスプレの魔術師と呼ばれる私にお任せください!」


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