第7話 酒と肴
「ぬしゃあ何者じゃ!」
妖怪か。これは食えるのか?
いわゆる河童だ。亀の甲羅に頭の皿。
食えても不味そうだ。
「相撲じゃ!」
そんなものは知らん。
俺は金棒で皿を叩き割るとそれは静かになった。
「それも食べるの?」
悪食の美味でさえ躊躇している。
だがしかし食わず嫌いは鬼の身では贅沢だ。
俺はバリバリと喰うつもりだったが寧ろもちゃくちゃという音が響く。
硬い。味以前に嚙み切れない。
裂くのは簡単だが咀嚼が上手くいかない。
「あーしも食べたい」
流石は悪食の美味だ。
俺が河童を差し出すともちゃくちゃと音を立てている。
不味くはない。
これはスルメだ。とにかく咀嚼に時間がかかる。
「美味しいね」
もちゃくちゃと音を立てながら蔓延の笑みだ。
こいつはただの悪食だろう。珍しいものが食いたいだけだ。
だが俺も笑みで返す。
この触感は癖になる。味ではない楽しみ方か。
流石は美味だ。目の付け所が違う。
甲羅はバリバリと逆に食いやすい。
それも美味と分けて食っているが美味の角が成長していないな。
これも咀嚼と同様に消化も遅い。
妖怪はおやつになっても主食にはならんな。
そして酒だ。河童の腰についていたものだ。
一口飲むが、どうやら酔えるようだ。
味は酒だ。美味くも不味くもない。
美味も興味津々なようだ。
俺が差し出すとクンクンと嗅ぎながらちびちびと飲んでいる。
お気に召さないようだな。
鬼の身でその飲み方では楽しむことはできないだろう。
「一気に煽ってみろ」
俺の言葉に一気に飲み込む。
そしてほうっと吐息を漏らす。
ようやくお気に召したようだな。
返してくる酒壺を俺も煽る。
酔いはするが今の俺には必要ないな。
物欲しそうな美味に俺はもういいと告げるとそれを煽りだす。
今が一番美味しい時期だろう。
それが苦くなるような体験など鬼の身では知る由もないのだからな。
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