『ショットガン!!』

志乃原七海

第1話、「ここは、崖の上」

ショットガン ~第一話~


おれは彼女にプロポーズするはずだったんだ。

指輪も用意して、夜景の綺麗なレストランも予約してあった。

全ては完璧だった。はずだった。


でもな、当日、彼女の部屋の前に着いた時、見慣れない男が立ってたんだ。

なんだ、この状況?って思ってたら、いきなり殴られた。

記憶がぶっ飛んで気がついたら、地面に転がってた。


で、目を覚ました彼女は、信じられないこと言ったんだ。

「ごめんね、あなたとはもう無理だわ」って。

新しい彼氏ができた、と。

わけわからん。意味がわからん。


頭に血が上ったまま、愛車の、自慢の真っ赤なスポーツカーに乗り込んだ。

キーを捻り、エンジンを吹かす。

バーン!とけたたましい音が夜の静寂を切り裂いた。


ハイウェイだ。

アクセルを踏み込む。法定速度なんて、今の俺にはただの数字だ。

3倍、いや、4倍くらい出てたか?

稲妻みたいに闇を切り裂いていく。


バックミラーにパトカーの赤いランプが見えた。

追ってきてる。だが、知ったこっちゃねえ。

この速度なら、あいつらなんてチョロいもんだ。

振り切ってやるさ。その後どうなろうと、知ったこっちゃねえ(笑)。


夜景を遠くに霞ませ、ひたすら加速した。

だが、突然、視界が白く染まった。

深い、深い霧だ。

まるで別世界に迷い込んだみたいだ。


道はいつの間にか山道に変わっていた。

そして、いつの間にか、車は荒れた未舗装の道を登っていた。

ガタガタと車体が揺れる。恐怖よりも、ただ前へ進む衝動が俺を突き動かしていた。


ふと、隣に気配を感じた。

なんだ?誰か乗ってたか?

恐る恐る隣を見ると、そこには、長い黒髪の女が座っていた。

俺をじっと見つめ、そして、ニヤリと笑うんだ。


「うわーっ!」


思わず声を上げ、前を見た。

そこにあったのは、ガードレール。

崖の向こうは、真っ黒な闇。

真っ赤なスポーツカーは、その闇に向かって突き進んでいく――。

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