第50話 運命
伸郎、騎士、純、優の4人と別れ、和夜とイカ天は2人で世間話をしながら怪化薬打倒委員会の建物へ向かっている。
「そう言えば、君の根も葉もない悪口をネットに書いた人達はどうするんだい?アカウント名『
「ああ~、恥ずかしいな・・・流石に復讐しに行かないよ。そもそも、あれだけじゃ追跡は無理だろうし」
「私がやろうか?追跡は時間がかかってしまうけど出来ないことはないよ」
「しなくて良いよ。その人以外にも色んな奴が居てキリがねぇもん」
「確かに、他にも『
「それに・・・家族と友達だけじゃなく、委員会の人達という新しい仲間が居るから。もう良いんだ」
「そっか」
イカ天は笑顔で答えた。少し寂しそうにも見えるかもしれないが、和夜の気持ちの流れが良い方向へ進んだことへの安心が大きい。
和夜とイカ天は怪化薬打倒委員会の建物に到着後、不死長老の庭に居た。不死長老は別の所に居るため、庭に居るのは2人と1匹だけである。和夜はケオケオにお茶をあげていた。ケオケオを可愛がる和夜を眺めながらイカ天は縁側に座り、神妙な面持ちで見つめていた。
「和夜ちゃん。話をしたいことがあるんだ。2人きりで」
「どうした?」
和夜はケオケオが横になって休み出したのでイカ天の方へ近づいた。イカ天は立ち上がり、和夜の腰に手を回し向かい合わせになる。和夜は自分が死にかけたことを思い出し、一瞬だけビビりつつも流石に違う、あんなことはもうされないとは分かっていたので逃げなかった。逃げなかったが状況が分からずパニックにはなっていた。
「あの時、どうして自分の命より私の命を優先しようとしてくれたの?」
「ああ~・・・その方が怪化薬打倒委員会の力になるだろうなって思って」
「それ以外の理由もあるんじゃない?」
なぜコイツは私の考えていることを何でもかんでも見破るんだ、と思い相手に聞こえない位の音量でボソッと呟いた。
「シンパシーって言うのかなぁ・・・」
「え?」
「何でもない・・・イカ天以上に私が生きる必要性がなかっただけだよ。特に、特別な理由はないんだ」
和夜はイカ天に殺されかける直前、マンに「お前は邪魔」と言われたことを思い出す。それはイカ天が大好きな博士に人間の姿になったら「お前は知らない」と言われた時の状況と少し似ている感じがしたのだ。だから、共感してしまった。そして、自分とは違い人々に必要とされるヒーローのイカ天には生きて欲しいと思った。自分よりイカ天を生かすべきだと考えたのだ。
「そっか・・・」
イカ天は笑った。絶対に何かあるとは悟ったが追及するのは止めておいた。そして、今度は和夜に顔を近づけて、片手を和夜の耳に触れるか触れないかの距離に近づけて言った。和夜はまた可哀相な位にパニックになるが、コイツは元は人間じゃないから人間の距離感を知らないのか?と考えたら冷静になれた。
「私があげたお揃いのイヤリング、付けてくれて嬉しいよ」
「ああ、デザインが気に入ってるからさ。ありがとう」
和夜が付けていたイヤリングはイカ天がプレゼントした物だったのだ。それは、イカ天を象徴するような紫色で、少し形の歪んだハート型だった。
「気に入って貰えたようで良かった。お守りみたいな物だから、なるべく付けてね」
「そうなんだ。分かった」
いつになく嬉しそうな笑顔のイカ天は少し真面目な表情へ変わる。
「もし良かったら・・・私と」
「何してるの?」
騎士が来た。いつの間に居たのだろか。騎士は和夜を守るように抱き、イカ天と距離を取る。この行動に和夜はまた驚きつつも冷静を装う。
「おお、帰って来たか」
「うん。ただいま」
「おかえり」
イカ天は2人を見たら一瞬だけ切ない表情をしてしまったが直ぐに笑顔に戻り
「邪魔をして申し訳ない。またね」
と言って去った。イカ天が居なくなったタイミングでマンが砂時計を連れてやって来た。
「おい、砂時計の砂が止まったぞ。これで分かっただろ?」
「・・・嘘~!?」
砂時計を見ると本当に止まっていた。マンは砂時計を確認させると直ぐに居なくなってしまった。彼女と1つの玉の不思議なやり取りの様子に騎士は聞く。
「砂時計がどうしたの?」
「あっ、いや~、マン先生とちょっと砂時計を使って賭けをしててね。いつになったら止まるかなって・・・負けちゃった~」
和夜は必死に誤魔化す。騎士は違和感を感じ、何か隠しているのだろうと見破る。
「悔しいな~。賭けでは負けないって決めてるのにな~」
「それは残念だったね。和夜ちゃんなら次は勝てるよ。任務も終わったし、そろそろ帰ろうか」
「帰ろう帰ろう~!」
「うん。夕食は何が良い?」
寮へ帰り和夜の後に騎士がお風呂に入っている間、和夜はベランダに出た。
「マン先生、居る?」
「何だ」
「おお、出てきた」
「お前が呼んだんだろ」
「砂時計の件なんですが、何で私の時に止まったんですか?新しい女の人に止まるはずじゃ」
「お前だったんだよ。キャラ設定したら」
「どう・・・いうことでしょうか?」
「俺はアイツに『運命の人とは離れない』っていうキャラ設定をした。相手が誰か分かるように砂時計の砂がなくなった時、触れていた相手が運命の人と分かるようにした。そしたら、お前だったってだけだ」
「そう、だったんですか。じゃあ、すみませんが今から早速、新しいキャラを用意して頂いて」
「そんなことは出来ん」
「いや、マン先生なら出来るんじゃ」
「ったく・・・お前は馬鹿なのか?両想いなのに何が相手に迷惑だよ。じゃあ、あの男の目は、好きな奴の目は節穴だって言いたいのかよ。好きな相手なのに好きな相手のことを考えているはずなのに、その相手の気持ちを踏みにじるようなことはするなよな」
「・・・それって」
和夜が何か言いかけたが、マンは居なくなった。和夜はこれからも騎士と一緒に居れる、いや、居てもいい。このことに対して、幸せ者だなと思い、笑みがこぼれた。リビングに入るとお風呂から上がった騎士がリビングのソファーに座って待っていた。果たして、ベランダの1人の女性と1つの白い玉の会話は聞こえていたのか、いないのかは彼しか分からない。
和夜はリビングで改めて騎士に謝る。前にも思いっきり謝っているが、改めてまた謝りたくなったのだ。頭を下げる和夜を見た騎士は焦り
「ええ!?頭を上げてよ。和夜ちゃん。俺は気にしてないよ!」
「私は騎士くんに相当、酷いことを」
「気にしてないから!」
「そう言ってくれて、ありがとう。委員会活動でヒーローとして頑張って償うよ」
「償うことなんてないよ。でも、和夜ちゃんがヒーローとしての活動は今までと変わらずに応援する。後・・・これからもずっと一緒に居て欲しい」
「・・・ありがとう」
和夜は笑顔で言った。この後、更に笑顔になることになる。
ちなみに2人で心が読める相手と戦った時に騎士もある秘密がバレなくて安心していた。騎士はあることを決めていたのだ。それは「自分が20歳を越えたら和夜に想いを伝える」ことだった。まだ、その時じゃない。だから、自分から言う時までは知られる訳にはいかなかった。
必死に謝る和夜を落ち着かせた騎士はソファーの隣に和夜を座らせる。
「今、この機会に伝えたいことがあるんだ」
和夜は息を飲む。自分は相手に酷いことをしたのだ。何を言われてもしょうがないとは思っているが怖かった。この覚悟は、あの時にマンが和夜に対して感じた緊張に似ているだろう。
「俺はずっと前から和夜ちゃんが1番に格好良いヒーローだと思ってた。今も変わらず思ってる」
「・・・気を使わせて悪いな・・・お世辞でも嬉しいよ」
和夜が照れ臭そうに言った。
「そんなんじゃないよ。そう見える?」
鈍感な和夜でも分かる。決して気を使って言われている訳ではないと分かる綺麗に真っ直ぐな目だ。
「もっと早く言うべきことだった。俺は誰よりも和夜ちゃんを格好良いヒーローだと思ってる。格好良い、心優しいヒーロー。俺は和夜ちゃんと言うヒーローのファン1人だよ」
騎士がそのように言っている間に和夜の目はウルウルしている。
「・・・うう・・・ありがとうー!ごめんねー!あんなことしてー!」
涙を噴き出させながら騎士の体にしがみ付きながらの謝罪に逆戻りしつつも喜んでいる。騎士は軽くまた焦る。照れている。こっちの方が少し大きいのかもしれない。
「ありがとう!ありがとう!いつもいつも守って貰ってばかりでー!」
「そんなことないよ。それに俺がしたくてしていることだし」
まだ20歳前なため、伝えたかった想いの1部のみ伝えて本日は終わる。
「恩返ししなきゃ。騎士くんが大変な時は私が敵をやっつけに行くから!絶対に行くから!その時が来たら絶対に行くから!」
「ありがとう」
「時代と書いて時と読む!その
「何それ」
騎士は無邪気に笑う。
「嬉しいよ。ありがとう」
騎士はいつも以上に爽やかな笑顔を見せる。
和夜が泣き病んで眠りに付く前、騎士に聞こえない位の音量でボソッと呟く。和夜よ。騎士くんを枕にしてソファーで寝て良いのか?まぁ、膝枕にされている本人が喜んでいるなら良いか。
「・・・る・・・
眠りに付く前と言うよりは寝言に近い。
「へへーん・・・私の時代だ~・・・へへへ・・・」
これは完全に寝言だ。寝ながら笑っている。何か良い夢でも見ているのだろう。騎士は和夜を見守りながらも自分も一緒に寝てしまった。幸せな2人である。
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