第40話 本心
和夜と騎士の緊迫した空気の中、和夜は騎士の発言や行動、今までの状態に対する苛立ちしかなかった。
「私と戦いたくない、傷つけたくない。そう言って私に攻撃しないのは良いヒーロー気取り?アピール?というか、攻撃する前から傷つける前提なんて、とんだ侮辱だよ」
「違う!」
「どーだろうーねぇ~」
「何で大切な和夜ちゃんに攻撃するようなことをしないといけないの?今していることは本当に和夜ちゃんがしたいことなの?」
「大切?笑っちゃうな~」
和夜は腹を抱えて笑う。それはリゼ達に復讐し間抜けに倒れ気絶する様を見た時以上だ。
「本当にしたいことなの?って、そうに決まってるでしょ。こんなにスカッとすることはないよ・・・さっきから、イライラしかなかったけどスカッとして来た。本当に言った通り、私が大切だったら、この手合わせは嫌だろうねぇ」
笑いを堪えながら言う。
「だとしたら、私の勝ちだな。ガードばかりするから強さはまだ分からないけど、大嫌いな人に嫌な思いをさせることは出来た」
笑顔から一変、真顔になり和夜は後ろを向く。違和感があり、片手で顔を拭うと水滴がついている。顔についている水滴は全て拭い、空を見る。
「雨でも降るのか?・・・ん?何だよ・・・これ」
両手をよく見ると、震えていた。すると、急激に苦しくなり、首を押さえ血を吐く。羽も取れ、地面に落ちてしまった。それを見た騎士は走って、和夜が地面に叩きつけられないように受け止めた。
急に血を吐く和夜を少しでも楽な姿勢にするために騎士は和夜の上半身を抱きかかえ地面に座らせた。和夜の肌と目は元に戻っていた。
「和夜ちゃん!・・・」
本気で心配し今にも泣きそうな騎士の顔を和夜は見たが、直ぐに目を逸らし少しの沈黙の後に冷たく言う。
「・・・さっき言ったでしょ。あれが私の本音。あの人にはそういう力も持っている。だから、今まで隠れてた本性が出たのよ。あれが本当なら今まで一緒に居たのは嘘。仲が良かったのも嘘。嫌いだったんだよ。騎士くんのことは嫌い。こんな人の体を心配する必要ないよ」
「・・・それが本当なら・・・何でそんなに泣いているの?」
頬には水滴が伝っているのが分かった。血が混じった涙。諦めて
「バレちゃったか・・・涙・・・抑えきれなかったな」
と言った。そっぽを向いていたが空を見た。騎士の顔は恥ずかしくて見れなかった。
「騎士くんが強かったり格好良いと言われてて認められてて羨ましかった。それが憎く思うこともあった。本当だよ。こんな醜い、格好悪い考えを少しでもしているから、あの人に利用・・・いや、見抜かれた・・・それでも騎士くんと居て楽しかったことが大きい・・・何でだろ」
騎士は片手で和夜の涙を拭うように顔に触れた。
「入院に付き添ってくれた時を思い出すね・・・お願いがあるんだ。騎士くんにはもっと他に仲良くなれる良い人が居るからその子と」
「そんなこと言わないでよ」
和夜は言いかけたことを止めた。
「そっか、だよね・・・本音を言うとこういう終わりにしたくなかった。でも、しょうがない。ここに居ちゃいけない人が居たから。半端な人間が半端に奥義を使って半端な考えでヒーローの真似事をして、こうなった」
騎士は和夜を今以上に強く抱き抱えた。
「きっとパパがイカイケメンを見つけて戦ったんだ。良かった。あの人を倒さないと私が死なないから。私がこれ以上、皆を傷つけなくて済むように」
和夜は騎士を見た。
「パパがあの人を殺したら私は生きられない。こんな形で最後になって、こんなことになってごめん。そして、今までありがとう。直接、謝れて、お礼が言えて本当に良かった」
精一杯、笑った。騎士も泣きそうな顔から頑張って笑顔で
「俺も和夜ちゃんと一緒に居て楽しかった。こんなに楽しい、一緒に居たいって思う人に初めて出会った。だから、お願いだから、これからも一緒に居てよ」
と言った。和夜は騎士の言葉にさらに笑顔になり言った。
「そう言ってくれて、ありがとう」
雲で隠れていた太陽の光が顔を出し、照らし出された和夜は今までで1番、綺麗な表情だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます