第21話 初任務 伸郎
伸郎も勿論、他の幹部達と同じ日に初任務をしていた。スタイリッシュで懐かしいデザイン、走行性能の高い車を走らせ向かう。目的地に着き車を降りた伸郎は嘘であってくれ、と願った。敵が居ると思われる建物は廃墟ビルだったのだ。周りも不気味な雰囲気が漂い、人の気配もない。怪化薬を飲んだ悪人が居るなら全然、怖くはないのだが幽霊が出るだったら話は別だ。会議の時に見せられた建物の写真があまりにも何か出そうな感じで心配した和夜は伸郎に塩を無理やり渡していた。持っておいて良かったと伸郎は思った。ポケットにしっかり入っていることを確認し、恐る恐る建物の戸まで歩く。
深呼吸をし建物の戸をガタガタと音を立てて開ける。戸を全開に開けて真っ暗な建物の中を見た伸郎は瞬きを忘れた。顔色の悪い大男達が密集して伸郎の方を見ていたからだ。しかも、なぜか全員は顔の下に懐中電灯の電気を付けて持っている。伸郎が戸を全開に開けたタイミングで電気を付けたのだ。目も瞼がないんじゃないかという位に見開いている。
「ひゃっきゃあああああああ」
変な悲鳴をあげて塩を思いっきり投げつけた。しかし、幽霊ではないので効かなかった。それに気づいた伸郎は恥ずかしそうに言った。
「・・・コホン、失敬。悪霊だと思って除霊の儀式をうっかりしてしまった」
「除霊?俺達は人間だ。人間離れした強さだけどよ」
そう言うと大男達は雄たけびをあげた。懐中電灯も粉々に割れる。
「うるせっ!」
と言って伸郎は耳を塞いだ。大男達はバタバタと暴れながら口や手、目からエネルギー波を出し、建物も一気に崩れる。
「何だ、気功波か?バトル漫画っぽいなぁ」
一瞬、数が多く焦るも余裕で避けれるため少し楽しそうにしている。そこへ、エネルギー波が伸郎の胸に狙って放たれ、両手で伸郎は受け止めた。
「おっ、ドッジボールと一緒だな」
そう言うと伸郎は1人の敵に目掛けて投げた。敵1人に当ると上手くバウンドし順番に全員に当たる。暴れ出していた者達の動きが止まった時を狙って伸郎はパンチ、キック、柔道技等を色々と行う。最後の敵には高くジャンプし落下重力も合わせて敵の顔を思いっきりぶん殴り初任務を終了する。これで終了、その予定だった。
暴れまくる大男達を倒した伸郎は一息つこうと電子タバコをポケットから取り出す。吸おうとした所へ、ドガンと衝撃が起きた。砂埃が起き、一気に伸郎の姿が見えなくなる。
「不意打ちは失敗か」
金髪の尖った髪を逆立てた白スーツの男が伸郎を横から殴ろうとしたのだ。それを伸郎は片手で咄嗟に掴んだ。不意打ち男は勢いよく後ろに下がった。
「人が一服しようとしている時に何だ」
「さっきの触れた感じ・・・過去に戻っただけのことはあるな」
「過去に戻った?」
「ああ、タイムトラベラーだよ。信じて貰えないだろうがな。俺は未来から来た。あんたと戦ってみたくてな」
「・・・確かに。タイムトラベラーなんて、信じれない話だな」
いやでも漫画世界だしなここ、と伸郎は思い出した。
「俺は
「怪化薬とは関係のない奴か」
「いや、関係はある。俺はさらなる強さを手に入れるため怪化薬を飲んだ。そして、強いと噂の奴には善人、悪人に関わらず戦いを挑んで倒して来た。いや、殺して来た。加減が難しくてな」
「善人にもということは罪もない人を殺してもいるのか」
「ああ、そういうこともあったかもな」
「お前は罪人だし怪化薬についても知っていそうだな。俺が勝ったら怪化薬について話をして貰おう」
仕方なく電子タバコをしまった伸郎は絆慈を掴み柔道技をしようとするが上手くかわされる。絆慈は長い足を伸郎の頭を目掛けて蹴りを入れようとするが片腕でガードをされる。
「残念だが俺は怪化薬については知らん。貰ったのを飲んだだけだ」
「誰に貰ったんだ?」
伸郎は絆慈が伸ばした足を掴もうとした。が、またもや絆慈は勢いよく後ろに下がる。
「分からん」
「答える気はないということか?」
絆慈は勢いよくパンチを連打する。それを全て伸郎は受け止める。
「違う。匿名で郵便受けに入っていたんだ。それを飲んでみたら今まで以上に力がみなぎって仕方がないんだ」
「誰だか分からない奴からの薬を飲むなんて不用心だな」
伸郎は呆れたように言った。
「まぁ普通の人間ならそうだな。でも俺の体に毒は効かない。面白そうだから飲んでみた」
連打パンチを受け止め続けていた伸郎だったが今度はパンチを受け止めるのではなく強く掴み手を離さなかった。すると勿論、絆慈の両手は伸郎に掴まれて動かせない。絆慈は力尽くで解こうとするが動かない。また足を伸ばし今度は腹を目掛けて蹴り手を振りほどき離れる。
「・・・やっと当たったな!」
「試しに当たってみたが痛くねぇな~」
伸郎の服が少し切れただけで無傷だった。当たった時の嬉しそうな表情だった絆慈は、それを見て無表情へと変わる。
「未来は今より怪化薬を飲んだ奴はパワーアップしてるんだな。今まで戦った奴とは違うのは分かるぜ」
「誰だと思ってる。違うに決まってんだろ」
またお互い攻撃したり、交わしたり、受け止めたりを繰り返しながら会話をしていた。
「それは今までじゃない。これからお前が戦うやつを含めて俺が1番だろう」
「根拠はあるのか?」
「俺の誰とも比べ物にならない強さが根拠だ」
2人の戦闘により地面は揺れ、ヒビが入り、音だけでなく周りの空気、オーラが凄まじかった。絆慈は黄金混じりの赤、伸郎はレインボーのオーラだった。お互い殴り蹴り、殴られ蹴られで互角に思われた。
「よし!場外ホームラン!」
が、やはり伸郎には敵わないようだ。絆慈はどこまでも吹っ飛んだ。
「おー、よく飛ぶな~、じゃない!流石に強くやり過ぎた!」
伸郎は走って追いかける。
絆慈は伸郎によって遠くに吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。意識はまだあったが戦う気はもうなかった。敗北を悟ったのだ。胸ポケットから写真を取り出す。
「ごめん。パパ、初めて負けちゃった」
意識がなくなり写真を胸に抱いて眠りにつく。
「おーい。悪い、加減ミスった」
伸郎が照れ笑いしながら来た。しゃがんで絆慈の様子を伺う。
「ん?」
手に持っている物に気付き確認した。伸郎は真面目な顔に戻り、直ぐに写真を絆慈の手に握らせた。小さい女の子の写真だ。きっと大事な写真だろうと思ったからだ。
「しっかり持っとけ」
絆慈の周りは光りに包まれ消えた。
「未来に帰ったか」
伸郎は自分の服を確認した。
「無傷だけど服はだいぶ汚れちまったな」
和夜とご飯でも食べに行きたいな、と思いながら帰宅した。
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