第18話 初 全体会議

 幹部同士の挨拶が終わった数日後、幹部の全体会議があった。和夜は恐怖でしかなかった。その緊張に騎士が気付き、手を取り屈んだ。

「俺等がいるから・・・」

和夜は感謝し頷いたが手を離す。顔が至近距離だったからだ。顔が赤いのを悟られないよう、逃げるように怪化薬打倒委員会の建物へ向かった。それを追うように騎士は付いて行った。


 和夜と騎士が会議室に入ると不死長老、黒葉、強、リゼ、キンバが集まり座って待っていた。黒葉は顔が広いことから人事リーダーで優秀な戦闘員とかを集めるのだが敵の有力な情報を掴むことも得意なため幹部の会議に一緒に居る。不死長老と黒葉は和夜に対して男3人が酷いことを言わないかが怖いので早目にいた。というか騎士と連携を取り、騎士と和夜は少し遅れて来たのだ。


 問題の男3人は黒葉に夢中で話をしていたが会議室に和夜が入ってくると一瞬、変な沈黙が出来た。が、また黒葉にニコニコと話をしていた。その様子に騎士だけでなく不死長老、黒葉も嫌な空気を感じた。不死長老が話をした。

「後は伸郎くんだけじゃの。和夜くんと騎士くんはそこに隣同士に座っておくれ」

「はい、失礼します」

強、リゼ、キンバから離れた席に和夜と騎士は座る。騎士は和夜の緊張を少しでも和らげるために話し掛けた。

「和夜ちゃん、今日の夕飯は何がいい?」

「えっ、うーん。そうだなぁ。オムライスをまた食べたいな」

「うん。分かった。帰ったら作るね」

「いつもありがとう」

和夜を毛嫌いしている男3人のことなど忘れて2人だけの和やかな空間だった。黒葉は和夜と話が出来る騎士が羨ましいが自分が男3人を相手にしておいた方が和夜へ悪口を言わない可能性が高いので我慢した。しかし、その認識は甘かった。リゼが嘲笑うようにボソッと言った。

「年下の男に面倒見て貰ってんのかよ。情けねぇな」

リゼの発言に対しキンバが小さい声で言った。

「こらっ、リゼ。俺もそう思うけど本人が居る部屋では言わない!」

小さい声のつもりだろうが和夜にもバッチリ聞こえる。2人の会話に対して何も言わないが強も同意するように嫌な笑みを浮かべていた。騎士が男3人の方を睨んだ。黒葉が先に口を開いた。

「私の大事な人に失礼なことを言わないでくれる?自分が上になれなかったのが気に入らないから、そういうこと言うのかしら?」

黒葉の冷ややかな目に男3人は一瞬、驚く。次に不死長老が残念そうに言った。

「この前の挨拶の時に3人が和夜くんに酷いことを言ったのは知っておる。君達も強い実力があるから幹部になって貰っている。だが和夜くん、いや幹部リーダー補佐役への態度があまり酷いと幹部から抜けて貰う。場合により委員会も止めて貰う」

男3人は不服そうな表情で黙った。不死長老の発言に和夜はひえぇ、と思った。自分を守ってくれるのはありがたかったが空気が重く辛かった。その空気を切るように伸郎がやって来た。不死長老は明るく声を出して言った。

「伸郎くん。席は真ん中のあそこの席に座っておくれ」

リーダー席に伸郎は座った。ちなみに不死長老はまだ伸郎に和夜と男3人の関係をまだ話をしていない。タイミングがなくてまだ言えてなかったのだ。


 会議室に全員が集まり不死長老がいつものように穏やかに話を始めた。

「全員、集まったの。皆よく集まって来てくれた。少し早いが始めよう。この前、挨拶したから顔と名前は大丈夫かの。幹部同士、是非、仲良くやって欲しい。今のような全体会議は定期的に行うことが多い。気になる点や敵の情報を共有したり話し合ったりするためじゃ。そこで誰がどの敵を倒すかも決まることもある。場合によって電話連絡で依頼することもあるがの」

全員、不死長老を見て黙って話を聞いていた。

「強くんだけは幹部経験があるの。最近、気になった敵の情報はあったかな?」

「いえ、特にありません」

「そうか。では今回、倒して来て貰う敵を皆にそれぞれ伝えよう」

不死長老がそう言うと大きなスクリーンが光った。そこには綺麗な女性が映っていた。

「初めまして。私は四葉です。今は黒葉の代わりに人事の助っ人をしていますがメインは皆さんへ行ってもらう敵の場所や倒してほしい敵の特徴等をこの場で話させて頂きます」

黒葉のお姉さん的存在、四葉だった。不死長老が言った。

「強くん以外は幹部になってからの初任務じゃの。応援している」


 四葉はそれぞれの幹部に行ってほしい敵の場所について話をした。

「皆さんに最初に任務して頂きたい場所の説明は以上です。これで最後になりますが何かある方はいらっしゃいますか?」

強が挙手をし話をした。

「和夜さんへの初任務のレベルが高過ぎるのではないかと・・・私の舎弟達も何人か怪我をし入院している者もいます。小柄で筋肉のない女性には厳しいと思います」

強の余計なお世話な意見に対しリゼとキンバも口々に言った。

「そうっすね。騎士さんの足手まといになったら大変だと思いまーす」

「和夜先輩には無理!とかいう訳じゃないけどー、他の人が行くか騎士さんだけの方が良いと思います」

一瞬ニヤッととした強がいつもの真面目な顔に戻り言った。

「そんな無理して幹部リーダー補佐役にしがみついて騎士さんとナンバー2を競わなくても良いと思います」

伸郎が無邪気に笑った。

「そっか。お前等、和夜がそんなに心配かー」

その発言に不死長老はガックリと頭を下に落とした。早く話をしておくべきだったと後悔した。まさか伸郎くんがこんなに鈍感なんて、と思っていた。騎士と黒葉はなぜ自分の娘が嫌味を言われていることに気付かない?と疑問に思い呆れていた。和夜は一瞬、侮辱に対して同調するとは思わず傷ついたが鈍感パパなら仕方がないか、と思い諦め下を向いていた。笑い終わった伸郎がまた話をした。

「俺も自分の娘だから怪我はして欲しくない。だから、危ない所には行って欲しくない。でも、和夜には無敵奥義がついてるから」

和夜は目を見開き伸郎を見た。

「なぁ?和夜さん。無敵返しは誰にも負けないんだろ?」

笑顔が出てきた和夜は答えた。

「うん。敵にとっては因果応報!無敵の奥義!」

その答えに格好付けた表情の伸郎はグッジョブサインをした。そんな2人に全員は呆気に取られた。呆気に取られたが不死長老、騎士、黒葉、四葉は安堵した。

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