第15話 準備
また不死長老の自宅へ向かった。今度は伸郎、和夜、騎士の3人だ。和夜はこれから逃げ出したくなるだろう。
伸郎と騎士は怪化薬打倒委員会の制服を着てからカメラマンに個別で写真を何十枚も撮られていた。HPで必要だからだ。有名人2人は絶対に飾りたいだろう。和夜は近くでパパ恰好付けた顔してるなぁ、騎士くん笑ってないけどイケメンだと何でも良いのかな、と思いながら見守っていた。事前に写真は断っていたからだ。自分は関係ないと思い見ていたが不死長老には改めて
「写真が苦手で申し訳ないがどうしても出てほしいのぉ。若い女性。しかも強い。そんな子が和夜くんしか居なくてのぉ。顔はモザイクとかスタンプ?とかで編集で見えないようにして貰うから」
とお願いをされてしまった。和夜は自分が幹部リーダー補佐役であることも考え答えた。
「顔が映らないなら別に良いですよ」
「すまないね。ちゃんと顔は見えないようにしてHPには出すからね」
「はい、ありがとうございます」
2人が撮影を見ながら会話をしていると扉を勢いよく開ける者が現れた。
「和夜!写真を撮るのね!私がおめかししてあげる!」
と言って和夜へ思いっきり抱き付いた。
「ぐへっ!黒葉ちゃん、どうちてここに・・・ぐへぇ」
ダメージを軽く受けた和夜をお構いなしに黒葉は強く抱き締める。そこへ、撮影が終わった騎士がやって来て和夜の脇を両手で掴み引き抜く。黒葉はハグの邪魔をされて騎士を睨むが和夜を見るとすぐに笑顔になり話し出した。
「和夜みたいに戦闘する幹部リーダー補佐役とかじゃないけど私も怪化薬打倒委員会に勧誘されたのよ」
「黒葉くんは強い人を見つけ集めるのが上手いから、人事に良いんじゃないかと思ってな」
不死長老が黒葉が選ばれた理由を説明をした。黒葉は目を輝かせて言った。
「あの時、自分も怖いはずなのに勇気を出して守ってくれた!私、和夜の力になりたい!だから、怪化薬打倒委員会の人事に入ったの。皆みたいに高校を止めて役に立てるように動くわ!」
すると不死長老が心配そうに言った。
「確かに黒葉くんには今にでも来てくれたら嬉しい。3人を支える素晴らしい人材がもっと増えそうだしの。でも何も高校を止めなくても。四葉くんが黒葉くんが高校を卒業するまでは1人でも頑張ると言っておった」
「えええ!?黒葉ちゃん確か卒業まで後少ししかないよね。卒業してからでもいいんじゃ」
和夜も黒葉が卒業まで僅かで止めるのは勿体ないと思い言った。しかし
「今すぐにでも力になりたいのよ」
と黒葉はやる気に満ち溢れた目で和夜を見ていた。和夜はこの目は止めれないと混乱し少し考え言った。
「高校生の内にしか出来ないことをして卒業してから怪化薬打倒委員会に没頭するのはどう?ヒーロー部っていう部活を作ってから止めるとか。怪化薬打倒委員会に興味を持った強い若い人が集まってくれたら仲間も増やしやすいんじゃないかな」
言った後に安易な考えかなと反応が不安だったが黒葉は和夜の手を取り
「それ良いわね!」
と言った。騎士は黒葉のことを少し睨むがハグのように引き離しはしなかった。不死長老と和夜は黒葉が高校を止めずに済むことに安堵した。
「そうだわ。今は和夜にメイクとかしないと!不死長老、更衣室は借りるわね!」
黒葉は和夜の手を引き歩く。
「黒葉ちゃん、別に顔は見えないんだからさ。そんな張り切らなくても。ありがたいけど」
「じゃあ、制服に着替えてヘアアレンジだけでもしないと。メイクも見えないけど気分を変えるために少し遊びましょ」
2人は会話をしながら更衣室に着いた。まずは制服に着替えた和夜だが鏡を見て開いた口が塞がらなかった。制服は人それぞれ違うデザインにするというこだわりを持った怪化薬打倒委員会と伺っていた。伺っていたのだが騎士が着ていた黒い制服にかなり似ていたのだ。違うとすれば和夜には迷彩柄が少し入っているが騎士には入っていない。騎士は長いズボンだが和夜は膝下位までしかない長さだった。ズボンが短いのは中にスパッツでも履けば良いので許そう。和夜はデザインがこれじゃペアルックに見えるじゃんかー、いやでも人が多いとデザインが重なる人もいるのか?じゃあ仕方がないし誰も何も思わない?と色々、思考を巡らせていた。パニックになっている所に黒葉が話し掛けた。
「騎士と似たデザインは気に食わないけど似合っている!じゃあ、ここに座って!ヘアアレンジしてあげる!」
「ありがとう!」
和夜は座った。黒葉は和夜のハーフアップを解きブラシで髪を梳かしながら言った。
「どうせなら長い髪を活かして、おろした状態のヘアアレンジがしたいわね・・・猫耳ハーフアップ?いやお団子ヘアでハムスターの耳みたいにするのも良いわね。うーん」
「黒葉ちゃん、あまり、そういうのはちょっと」
「よし!猫耳は普段でも出来そうだし、お団子にしましょ!写真映えには良さげだわ」
「ちょっとー」
黒葉はガン無視で和夜のヘアアレンジをした。小さいお団子が2つのハーフアップだった。
「私には可愛い過ぎる髪は似合わないような・・・」
「そんなことないわよ!次はメイクね!和夜のテンションを上げるためにも!」
「メイク!勉強させて頂きます!先生!」
和夜は真面目に仕事メイクの方をして来てしまっていた。自分自身メイクに自信もなかったので得意な子に頼めるのは良かったと思った。
「鼻にハイライトを入れる時は鼻先だけの方が良いわね」
「はい!先生!」
メイクレッスンは終了し和夜は完成された。
「先生!ありがとうございます!」
「良いのよ」
黒葉はえっへんという顔をしていた。和夜は鏡で全身を確認し思い出した。
「そうだ。どうせなら大事なアクセサリーもありかな?でもなぁ流石にチャラいかー」
「良いんじゃない?不死長老は別に何も言わないわよ」
「そっか!」
和夜は首元を少し開け大事なネックレスを付けたら黒葉と一緒に皆の元へ向かった。
和夜は内心、恥ずかしく思いながらもいつも通りの雰囲気で扉を開け中へ入る。
「お待たせしましたー」
「おお、和夜さん似合うじゃないすか」
「可愛い」
「和夜なんだから当たり前でしょ~、私も手を加えたし」
不死長老は黙って皆を微笑ましく見ていた。
「パパは撮影が終わったし先に帰ってるわ」
「分かった。頑張って!」
「おう!」
和夜はきっとパチンコに行くんだろうなと思いエールを送った。伸郎が出て行った後に黒葉は思い出したように言って出て行った。
「私はさっそくヒーロー部を他校にも広まるように立ち上げないといけないから。またね」
「本当にありがとう!またね」
和夜は不死長老へ向いて聞いた。
「長老さん、ネックレスしちゃっても大丈夫ですか?」
「ああ、別に構わんよ。特に決まりはない」
「ありがとうございます」
カメラマンがスタンバイをし始めた。
「和夜くんは騎士くんとペアで活動するからの。ペアでの活動風景を撮りたい」
「そうなんですか。分かりました」
そこから会議室に2人で座り話し合っているような写真、資料室で資料を探したり読んだりしている写真を撮った。そして、和夜は疑問に思い苦笑いで言った。
「これ要ります?」
「ティータイムを楽しむ光景も1枚くらいは欲しい」
和夜はそういうもんなのか?と思い撮影を続けた。
「次で最後じゃな」
「はい。最後はどんな写真ですか?」
「寮での生活のイメージ写真じゃ」
「へぇー寮もあるんですか」
「伸郎くん達が委員会に入ってくれるのをきっかけに大急ぎでリフォームもしたんじゃよ。だから綺麗じゃ。というか騎士くんから和夜くんと寮で一緒に住むと聞いとるが・・・シェアハウス?だっけかの。知らなかったのかい?」
「はい!?」
和夜の首は高速で騎士の方を向いた。
「騎士くん!ちょっと!」
騎士は空を見て純粋な爽やかな笑顔を浮かべていた。
「楽しみだなぁ」
「なんで一緒に済むことになってるの!?」
「え?ここの寮は1人暮らしだけじゃなくファミリー用、シェアハウス用があるって知って良いかなと」
「だからって勝手に決めるんじゃない!」
騎士はハッとした顔をした。
「ごめん。一緒に住めたら良いなと思って舞い上がっちゃって」
和夜は子供から楽しみを奪うようで急に罪悪感が出てきた。2人の間に不死長老が入った。
「まぁまぁ、一緒に暮らすといってもちゃんと1人1人個別の部屋が用意はされているから。それに寮費は無料で設備も色々と整っているのが自慢じゃ」
「個別か・・・それならまぁ」
「良いの!?」
騎士は悲しそうな顔から一変、笑顔に戻り和夜へ聞いた。
「うん。まぁ勝手に決められたのが、ちょっとあれだったけど」
「ありがとう!」
和夜は自分の自立のためだし良い機会と思って気を取り直し向かう。これから寮生活で悩むことが出るとは知らずに。寮でのシェアハウスの生活イメージの写真は一緒にリビングでテレビを見る、騎士が料理をして和夜が見守っている後ろ姿、一緒に食事をしている等プライベートも大事にしているとアピールするための写真だった。写真の苦手な和夜に配慮してカメラマンが笑顔にしやすいように気を使ってくれてたお陰で楽しく撮影が出来た。騎士も笑顔だった。が、和夜はイケメンとのツーショットがHPであがるのには嫌な予感がした。しかし、今更断れず逃げ出せなかった。撮影も無事に終え2人は帰宅した。勿論、言わなくても分かるだろうが騎士は和夜を家まで送った。
和夜は家に入り伸郎と美智子に話をした。
「寮もあってタダなんだってさ。設備も整ってて綺麗だった。それで色々あって私はそこに住むことになった」
「は?」
「へ?」
2人は突然のことに驚いた。
そのまた数日、HPの写真をバンバン撮影された3人は不死長老の家へ歩く。
「用があれば、まとめてすればいいのに」
「まぁ、大急ぎで色々と準備してくれてるみたいだし。しょうがないんじゃない?」
会話をしている内に到着した。不死長老の案内する方へ付いて行くと光り輝く物がズラッと並んでいた。
「おおお、スゲー。スポーツカーとか色々ある」
「おおお、憧れの王冠マークの車もある!このマークやっぱり恰好良い!」
「マンくんから聞いたよ。2人はそっちの世界で運転免許もちゃんと取っていると。これから活動する時に遠出もあるから必要になると思っての。どれでも好きなのを選んで欲しい」
興奮する伸郎と和夜へ不死長老は声を掛けた。2人ははっちゃけていた。和夜は思い出したように言った。
「そういえばノーカンに会いたいな」
「何だそれ?」
マンが現れた。
「私の前の世界にある愛車のあだ名。和夜の車だから頭文字に『の』の字を入れて車は英語で『Car』だからノーカン」
「・・・どういうセンスしてんだよ」
和夜がまた車を見出した所にマンがボソッと言った。
「何か言いました?」
「何でもねぇ」
悪口を聞き取れなかった和夜は不思議に思いながら車を見る。マンは騎士に睨まれているのに気づき消えた。伸郎が言った。
「バイクもある。良いなぁ。免許取るかなぁ」
「だねぇ。私もバイクの免許取ろうかな」
「危ないからやめとけ」
「なんでよ」
キャッキャしながら2人は乗り物を選んでいた。
「騎士くんはどれがいい?一緒に乗る人だし何か希望を」
「俺は特にないかな。和夜ちゃんが乗りたいのに乗りたい。当分は和夜ちゃんに運転させることになっちゃうし」
「良いの!?迷うなぁ。SF映画でモデルになった車も良いな。主人公が格好良いんだよなぁ」
「・・・他の男」
後ろで騎士が怖い顔で落ち込んでいるのに気づかず和夜は車を見ていた。
「やっぱり王冠が気になるかなぁ」
「試しに乗ってみるといい」
「良いんですか!?ありがとうございます!じゃあ騎士くん助手席に」
不死長老に許可を貰い憧れの車に和夜は乗りハンドルを握る。騎士は助手席で楽しそうな和夜を見てまた笑顔になっていた。和夜がいると笑顔が多い男である。伸郎は運転席の窓から顔を覗かせる。
「和夜さん、運転は出来るか?」
「確かに・・・免許ちゃんと取ってるけど乗用車は慣れてないしな」
「本当に大丈夫かよ・・・まぁ慣れれば平気だろう」
「すみません。長老さん、練習しても良いですか?」
「構わんよ。慣れない車だと必要だろう」
「ありがとうございます!」
和夜の特訓の日々が始まるのであった。
ある日の特訓の日。運転を指導する伸郎が居なく和夜と騎士の2人での特訓だった。騎士は内心いつか事故らないか不安だった。顔に出していなかったが特訓が終わる度に2人、無事で良かったと胸を撫でおろしている。今回も無事に終わった後の帰り道に和夜は聞いた。
「そう言えば、騎士くん学校は大丈夫?私は退学しているから委員会には毎回、呼ばれたら出れるけど」
「ああ。俺も止めたんだよ」
「へ?・・・えええ!?」
和夜は目をかっぴらいた。
「俺、高1だから卒業まで2年以上かかるし、学校に行ってたら和夜ちゃんとペアで活動するのに制限があるし」
「いやいやいや」
「勉強は独学でどうにか出来るから高卒認定受ければいいし。俺は全然、大丈夫だよ」
「・・・そうかぁ」
騎士は頭もとても良かったことを思い出し本人の選んだことだからな、と否定はしなかった。和夜の車の運転は時間がかかったが何とか1度も車をぶつけることなく上達させた。ペーパードライバー卒業である。
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