天界のおとしもの

餡堂みつ

第1話 雨神

 その昔、その国では一年を通して雨が降り続いた。雨は止むところを知らず、最初こそは米や穀物が育つ恵みの雨だと喜んだ農民たちも、この気候の異変に気付き始めた。国王はこのまま雨が降り続けば国が水没してしまうと焦り、国中の至る所に廟や祠、石像や銅像を建てては「雨神像」「雨神廟」と名付け、国民に信仰するように命じた。

 その甲斐あってか、次の年の春になると降り続いた雨はぴたりと止み、王国の天候は晴れと曇り、雨と雪が正常に廻るようになった。その年の雨が初めて止んだ日に、国王に八番目の王女が生まれた。

霜星国そうせいこくの第八王女は『董雨とうう』という名前らしい」

「まあ!雨を止ませた雨神様にぴったりの名前ではないですか!」

「神様の使いに違いない。董雨さまは奇跡の王女だ」

国民はこの王女の誕生を喜び、雨が止んだことで用なしとなったと思われた廟や石像などには信徒たちが足を運び、跪いて感謝の拝礼をしたりした。

 董雨は一国の八番目の王女、国王の十番目の子供としてのびのびと成長し、美しき姫君となった。


 董雨が十六歳となる年の春。隣国の燈火国とうかこくの将軍が霜星国の王宮にやってきた。

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