第四章:「三人寄れば模型の知恵」

土曜日の昼下がり、町田駅から徒歩7分。

東雲りなのワンルーム。間取り1K、やや生活感あり。そこへ――


「おじゃましまーすっ!」

「失礼します……え、すごい……HGもMGも積んである……」


ロリータ服のやよいと、“普通”を脱ぎかけたOL・柊木が、紙袋を抱えてやってきた。


部屋の中央には、すでに完成した“PGガンダム Ver.2.0”が神々しく鎮座していた。


「ちょっと待って!? PG完成してる!? これ、一週間で!? 初心者で!?」


「やよいのアドバイスがあったからね! あと、“魂”で作った!!」

「出た、精神論!!」


柊木は、完成したPGを見つめて小さく感嘆の声を漏らした。


「すごい……この関節の処理、まったくズレてない……肩のスライド構造も完璧……」

「え、分かるの!? 柊木、完全に“そっち側”じゃん!!」


「はい……もう隠しません……私、ガンプラが好きです。アニメもプラモもアニソンも、みんな、みんな好きです……!」


「よっしゃあああああ!! 擬態解除キターーー!!!」


「え、そんなにテンション上げること……?」


「当たり前よッ!」

と、やよいがガラガラと紙袋を開ける。


「というわけで、今日は“ガンプラお披露目&初模型女子会”開催よッ! 持ってきたわよ~、我が魂の1/100プロヴィデンス!!」


「おおっ!? でっか!? ……てか、これトップコートだけ!? なのに、この質感……」


「“簡単フィニッシュ”ってやつよ。塗りすぎないことで素材の質感を活かすの。見る人が見れば、奥の深さが分かるってヤツ」


「鮎原……あなた何者!?」


「変態よ。ガンプラ界のロリータ変態よ」


「え、自分で言っちゃう!?」


柊木もおもむろに、自前の“HGデルタプラス”を取り出す。


「この前、ユニコーン観返してて……つい……。あ、まだ途中ですけど……」


「……え、柊木。これ、合わせ目消してあるじゃん。しかも墨入れ完璧」


「うっ……見られた……!? まだ未完成なのに……!」


「いや、むしろ未完成でこのレベル!? てか、この機体チョイス……通すぎるでしょ!」


やよいは頷きながら、缶チューハイを一口。


「この3人……バランスいいかもしれない。私は技巧派、東雲は情熱派、柊木は……」


「……隠れ技巧派……?」

「擬態スナイパー型ね」


「もはや戦術分類なの!?」


──


その夜。

模型に囲まれた部屋で、3人は語り合った。


ガンダムの話、推しの話、作業中の失敗談、塗装の匂い、アニメの次回予告。


「……なんかさ」

ふと、りながつぶやく。


「こんなふうに、女3人で集まってさ。プラモ並べて、お酒飲んで、語り合うなんて……想像もしてなかったな」


「ふふ、そうね」

「まさか、OL生活の中に“プラモの時間”が生まれるなんて、思いもしなかったです」


「……ねぇ。今度、3人で“合同作品”作ってみない?」


「え!? 3人で一個の機体を!?」


「そう! それでSNSとかにアップしてみるの! “女子3人で作ったガンプラ”って、なんか良くない!?」


「え、それ面白そう……やるやる!」


「よし、じゃあ決定! 名付けて――」


\“町田モケ女三銃士”プロジェクト、始動!!/


3人の模型女子たちが、いま手を取りあい、沼の底へと一歩ずつ進んでいく――

それはまだ、模型女子“四天王”誕生前夜の物語。

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