第3話 一部始終が配信されていた件
――時は、少しばかり遡る。
「んじゃま、今日の配信はザコ共の獲物を横取りしてやったってところまで。次回も俺に貢ぎやがれ豚共。じゃあな♪」
その台詞とともに、今日も配信が終わる。
『乙~』
『誰が豚共だ。◯ね』
『つえ~のにムカつく』
『強さ意外ママの胎内に置き去りにしてるだろ』
『でもどうせお前等また見に来るんだろ?』
『当然』
『見るだけなら無料』
『俺より性格酷いヤツがいるのが人生の救いになってる』
『お前等も大概ろくでもねぇな』
いつも通り、チャット欄が炎上したまま配信終了を迎える。
――そのはずだった。
「……それじゃあ、あんたらとはもう会うこともないと思うけど。最後に一つだけ」
いつもならここでブツッと途切れるはずの配信がなぜか途切れず、代わりに3人組との会話が続いていたのだ。
『あれ? これ続いてる?』
『おーい、切れてないぞ?』
『まだ続いてんじゃね?』
チャット欄が困惑ムードにある中、一樹はとんでもない一言を言い放った。
「さっきはすいませんでした。経験値の分……には足りないかもしれませんが、ご査収ください」
『は?』
『今何つった? 聞き間違い?』
『いや、パーティーの3人も困惑してるぞ』
『おい、キャラ崩壊してっぞ』
『演技なのかガチなのか』
『ひょっとしてヤラセ?』
『にしては3人の反応がマジすぎんだろ』
視聴者達は、突如として起きたイベントに困惑しつつも、皆一様に同じ考えを浮かべていた。
これは、要するに配信切り忘れの、放送事故であると。
そして、そうとは知らずに一樹の素が全国に曝け出されていく。
「まあ、いきなりそんなこと言われても……って感じですよね」
そう言って、一樹が身バレ防止のゴーグルをとった瞬間だった。
『顔出しマジか』
『てかふつーにイケメンじゃね?』
『ムカつく』
『こっち側だと思ってたのに』
『夜中背後に気をつけろや(血涙)』
『なんか普段より炎上してて草』
今まで頑なに顔出しをしてこなかった一樹が顔出しをした。
その時点で、演技やヤラセを疑う人などいなくなっていた。そして――更に放送事故は止まらない。
「それで? ほんとにお詫びのつもりなわけ?」
「はい。流石に、いきなり乱入してモンスターを狩っちゃったので、その分はせめて埋め合わせないと。お話を聞く限り、そちらはランクアップをかけた戦いの真っ最中だったみたいですし」
「それはそうだけど……って、ちょっと待ちなさい!? この量……!」
「た、足りなかったですか!? 今すぐギルティ・ビーをもう10匹ほど狩ってきましょうか?」
『なんでその量の魔石をあげて足りないって発想が出てくんだよw』
『ギルティ・ビー10匹狩ってくるって、パワーワードすぎw』
『おもしれーなコイツw』
『いい奴っぽいけど感覚がバグってる』
――。
「ギルティ・ビーは、極稀にスケルトン・ビーと協力して狩りをすることもある、危険なモンスターなんです。だから、戦うときはもう少し周りに気を配った方がいいですよ?」
『マジかコイツ! さっきスケルトン・ビーまで狩ってたのかよ!』
『カメラに映ってたか?』
『状況判断能力どうなってんだ……人間技じゃねぇ』
『待て。強くて性格いいとか欠点なさすぎだろ。負けた』
『何と勝負してんのか知らんが、お前は元々負けてるよ』
もはや言い逃れできないレベルで、普段とは違う様子を曝け出す一樹。そしてついに――決定的な一言が飛び出した。
「しがない炎上系配信者ですよ。演技とはいえ心苦しいですが」
『はい、言質いただきました♪』
『速報! 演技確定!』
『朗報! 放送事故確定!』
『炎上系配信者が実はめっちゃいい奴だった件』
『コイツが気付いた時が楽しみ……』
一樹の知らないところで盛り上がりを見せるチャット欄。
そして。奇しくも、ちょうどそのときだった。
――不意に、一樹の視線がカメラを向いたのは。
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