アベレージ
ヤナミ ウリュウ
プロローグ
夏の風物詩の一つといえば、高校野球
国民的プロスポーツの一つといえばプロ野球
野球というスポーツが誕生してから、プロアマ共に多くの人を熱中させ続けている。
主に男子プレイヤーを中心に発展していた野球だが、ある時を境に女子野球の発展にも力を入れようという動きが世界的に起こり、長い長い年月を経て、ついに女子野球も男子の野球に劣らない規模のスポーツ興行へと発展した。
そんな時代の、白球を追いかける少女達の話
照りつける日差し、響く声援
人々は白球の行方に一喜一憂し、熱気がスタンドを包み込む
そんな熱い試合の中、1人熱くなれない少女がいた
夏のリトルシニア女子野球全国大会の決勝
2点ビハインドで迎えた9回裏、ツーアウトランナー1塁
一弓はバッターボックスで構える後輩の姿を、ネクストバッターズサークルから見守る
「絶対に先輩まで繋ぎます!」
バッターボックスに向かう直前、彼女は一弓にそう宣言した
そして今、相手投手から8球も粘りなんとか出塁しようと必死になる彼女を
一弓はどこか冷めた気持ちで見つめていた
そして9球目、相手投手の決め球であろうカーブに彼女のバットは大きく空を切る
ドッと相手のベンチが沸き、メンバーがマウンドに集まり抱き合う
「先輩...すみません...私...」
「別にいいよ、来年頑張って」
大粒の涙を流す後輩の肩を軽く叩きベンチへ下がる
悔しさとか悲しさなんて感情は全く無かった
野球というスポーツに対する情熱を、いつの間にか失ってしまっていたから
こうして一弓の中学最後の試合は幕を閉じた
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