BLACK BRIDEー異世界と繋がった世界。黒い花嫁は変形する魔銃で魔物を撃ち堕とすー

鷲巣 晶

第1章 黒い花嫁

第1話 黒い花嫁と呼ばれた女



警察の車両がそのビルの前に集まっている


KEEP OUT


そう書かれたテープを潜り抜けて


私はスラムにある『ファーヴニル』傘下の組織に足を踏み入れた


硝煙の匂いと血の匂い


事務所にいたドワーフ系マフィアは、紙切れのように引き裂かれて死んでいる


「よう、ブライド」


背の高い、俳優のように顔のいい男


眠警部補が私に声をかけてきた


「眠警部補、どうなっている」


「見ての通り、ドワーフ同士の薬のやり取りで揉めてね。一人の売人が『純正強化麻薬ソーマ』を使って、ここにいた十人のドワーフを一人で引き裂いちまった。異世界のソーマは恐ろしいね。銃器で武装したドワーフがまるで相手にならん」


「犯人はわかっているのか?」


「犯人は、アランというドワーフだ。大量の薬を持ち逃げして警察と『ファーヴニル』の奴らに追われている。お前さんら『デウスエクスマキナ』も追っているんだろ?」


「このアルカディアの異世界由来のトラブルは私たちの管轄だからな」


コートを翻して私は外に向かう


急がないと、より多くの犠牲者が出ることになりそうだ


「何者なんですか?あの女」


新人の刑事が眠警部補に私の事を尋ねる


「デウスエクスマキナのこの手の事件の専門家さ。人呼んで黒い花嫁ブラック・ブライドと恐れられている」



「はあはあ」


麻薬売人のドワーフ、アランは苦しんでいた


地面に嘔吐物を吐き捨てる


朝に食べた、ベーコンと卵と、パンらしきものが地面に飛び散った


ソーマが切れることによる禁断症状


脱力感、抑鬱状態、手足の震え、吐き気、頭痛、幻覚、妄想が出ているのだろう


虚な瞳で私を見ていた


「殺し屋か?」


「それはお前次第だ。・・・今のところは私はお前を拘束しにきただけだ」


「組織の奴らが俺を生かしておくわけがない。俺を殺すに決まってんだろうが!!」


被害妄想が酷い


その時だった。


向こうから親子連れが歩いてくる


アランの目にその親子連れが写った


アランは素早く動き、母親から娘を取り上げてその首筋に手刀を当てる


「よせ」


私は銃を抜いた


その銃は巨大な二本の角を持つドラゴンの装飾が施された黒い銃。


スライドにHADESと冥府の神の名が刻まれた拳銃を奴の頭に向けた


銃のベースはM2011


9mmパラベラム弾使用、銃身一体型のコンペンセイター、先端が鋭く尖ったロアフレームが取り付けられている私の相棒だ


銃はアダマンチウム製であり、物理的な力では傷ひとつ入らず、その頑強さを活かして強装弾や魔術弾を装填できる特徴がある


「その銃を捨てろ」


「お前がその子を話したら捨ててやる」


「嘘だ。お前たち殺し屋が銃を捨てるわけがねえ!!」


「助けてママ!!」


「お願いです、その子を話してください」


私の目に映る少女が、あの日の自分を思い出させる


両親の血でまみれたドレスを着て、泣いていたあの日の記憶を


「うるせえ。お前からまず、殺してやる、純正ソーマを打った俺は無敵なんだ!!」


アランは少女の首に向かって手刀を振り上げた


いかん


ソーマで強まった力で少女の細い首に手刀を叩き込めば、間違いなく、彼女の首は切断される


やむおえない


私はハデスの引き金を引いた


銃弾がアランの右目を貫き、脳漿を飛び散らさせる


アランはそのまま、後ろに倒れて事切れる


少女はアランから離れて母親の方に泣きながら駆け寄った


また、一人殺してしまった


硝煙をあげるハデスを下ろして私は深く息を吐いた


「お姉ちゃん」


少女と母親は私に向かって頭を下げる


「娘を助けていただきありがとうございました」


「ありがとう、お姉ちゃん」


パトカーのサイレンの音が聞こえてくる


もうじき、眠警部補が到着して現場検証を始めるだろう


私は黒いコートを翻してその場を立ち去った

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