23.混乱してきちゃった?♡
紅真にとって……いや、二人にとってのラストターン。
先程の交換により、紅真は奇しくも結夏と同じ選択を強いられていた。
今の手札で作れる役は♡Jと♧Jのワンペア。結夏と同じように、残りのカードを捨ててスリーカード以上を狙うのが彼にとっての安牌ではある。
しかし彼にも、♡Jを捨てて"フラッシュ"を狙うという手がある。
けれどそれは、一歩間違えればワンペア以下の役しか作れなくなってしまう危険な賭け――――。
紅真も結夏と同じように、ペア以外のカードを捨てようと手をかけるが、先程の結夏の綻びが頭をよぎり、一度手を止めた。
(雨粒の性格上、あの笑顔はハッタリではない。おそらく勝利を確信したが故の笑いだ。とすれば、"スリーカード"以上は想定した方がいい。最悪の場合、俺の手札の中で一番望みのある強役、"フラッシュ"よりも……。いや待て、仮に俺が雨粒と同じ役を作れたとして、勝つことができるのか? ♧はスートの中でも最弱。しかし"フルハウス"より上を狙うのであれば、ほぼ確実に屈辱的な敗北が待っている――――)
険しい表情で手札を見つめる紅真を見て、切松は呟く。
「……ポーカーって結局、運ゲーだろー? どんだけ考えても変わらなくね?」
「ううん。そんなことない。引く時は運かもしれないけど、捨てる時は実力。こうまは今、見えないかいちょの手札と戦ってる」
そう……チビっ子は正しい。
ポーカーは役を作れればいいってもんじゃない。
"相手より強い"役を作る必要がある。
希望を捨てる様だが、おそらく"フラッシュ"が完成したとしても雨粒には勝てない。
奇跡的に"フルハウス"や"フォーカード"に漕ぎ着けても、ショーダウンまで気を抜くことはできない。
今、俺の手札は『♧4・♧8・♧10・♡J・♧J』。
♡Jと♧Jを残し、僅かな望みにかけて"フルハウス"か"フォーカード"を狙う。
しかし、例え奇跡を起こしたとしても、数字の大きさによってはタッチの差で敗北が有り得る。
本当に、このまま運に任せていいのだろうか。何故だか心がザワついて仕方ない――――。
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