14.ちゃ〜んと見てる〜?♡
話は数日前に遡る。
中間テストで屈辱の敗北を喫した結夏は、放課後になればすぐに生徒会室へと向かい、何とかして紅真を負かす方法を考えていた。
結夏は高級そうな背の高い椅子に腰掛け、積み上げられた書類一つ一つに目を通しながら虚空に向かって呼びかける。
「
生徒会室には、誰もいない。
結夏の呼び掛けから数秒、どこからも返事は返ってこない。
書類を捌く手を止め、結夏は再度、呼びかける。
「
すると、棚の裏から黒髪セミロングの女の子がひょっこりと顔を覗かせた。
小柄な背丈に似合わぬ赤いリボンが特徴的な彼女は、ぱちぱちと瞬きをして結夏を見つめる。
「どうしたの」
「今から私と、軽く遊びませんか?」
「しかたない」
しゅりは再びぱちぱちと瞬きをすると、スカートのポケットから、スペードがドクロで描かれたトランプを取り出した。
「いいよね」
「……ええ。もちろんよ」
結夏の合意のもと、しゅりはトランプをケースから出すと、カジノのディーラー顔負けのスピードでデッキをシャッフルし始めた。
「ゆい……かいちょ。なにするの」
一瞬、結夏が怖い顔をしたことをしゅりは見逃さなかった。
「そうですね。では……スピードでどうでしょう」
しゅりの表情がぱぁあっと明るくなる。
「うん。やろう」
「あの時の決着、ここでつけましょうか」
結夏が来客用のソファに腰掛けると、机を挟んで反対側のソファにしゅりもちょこんと座った。
しゅりは赤色を結夏側に、黒色は自身へとカードを配り始める。
(あの頃が、なつかしい――――)
去年の春。
やや遅めの流行り風邪で寝込んでいたしゅりは、初めての登校が入学式から一週間後になってしまった。
クラスでは既にちらほらとグループはできており、知り合いも誰もいない。
ひとりぼっちを覚悟したしゅりに、彼女は話しかけてきた。
「あたしは雨粒結夏。あなたは?」
ムスッと噤んだ口に、つり上がった眉。どこか高圧的な態度で見下ろしてくる彼女に、しゅりは目をぱちぱちと瞬かせる。
「不束しゅり。もしかして、ひとりぼっち?」
しゅりが首をこてんと傾げると、結夏は顔を真っ赤にして声を荒げた。
「なっ……! そ、それはこっちの台詞! あなたが一人だったから、仕方なく話しかけてあげたの!」
「ゆいか、やさしいね」
「う、うるさい! なんでいきなり名前呼びなのよっ!」
それから、結夏としゅりは二人で過ごすようになった。
「しゅりはトランプが得意なのね。だったらあたしが勝負してあげる。ま、どーせあたしが勝っちゃうけどね――」
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