アイム、総理〜(^人^)
ジュン・ガリアーノ
総理はただの社員だ
───ううっ、そんなっ! だったら私はなんの為に……なんの為に総理になったんだあああああっ!!
心で絶叫を上げた私は、ドサッと両膝を床につけ全てを悟った。
いや、”悟らされた”顔には絶望の闇が差し、抜け殻のようになっているだろう。
この部屋に”ヤツ”が来る前まではあった、総理としてのプライドや喜び、何より『この国を良くしたい!』と、いう気概も無い。
ヤツから”真実”を知らされたせいで、すべて、一瞬で灰にされてしまった。
そんな私の横で”裏政府”の王『ジョ・ジーヴ』は、大勢のSPたちに守られたまま、前を向いて静かに告げてくる。
「もう理解したようだな。オマエの肩書は総理だが、我らにとっては”社員”に過ぎぬ」
「しゃ、社員……」
要は、ただの駒。
自由な決定権など何もない。
彼はそれをシンプルかつ、これ以上なく分かりやすく告げてきた。
しかし、まだ私の認識は甘かったのだ。
ジョ・ジーヴの意思はさらなる深淵にある。
「キサマには、
ジョ・ジーヴは、軽く口角を上げ、静かに、だが、全身から絶大なる漆黒のオーラを立ち昇らせた。
──従う者は赤い祝福の光に照らされ、逆らう者は自らの血で赤く染まる──
絶望して尚、私の全身にゾクッとした悪寒が走る。
この言葉の意味を、私は即座に理解したからだ。
──従えば優遇され、逆らえば処刑──
学生の頃に必死で勉強し、”帝国大”まで出たことを今ほど恨めしく思ったことはない。
理解力なんて無ければ、この言葉の意味を知らずに済んだのに。
一体、私はなんの為に青春を犠牲にしてまで勉強をしたのだろうか。
───こんなことを理解する為に帝国大を卒業し、ヤツらの社員になる為に、ここまできたのいうのかっ……!!
あまりの怒りに絶望が少し引いたが、代わりにとてつもない悔しさが心から込み上げてくる。
だが今は、それを押し殺すしかない。
燃えたぎる気持ちから溢れ出そうになる炎を閉じ込めるかの如く、私はギリッッ……! と、奥歯を噛みしめた。
だが、全身が怒りで小刻みにに震えるのを抑えられない。
───くそっ、くそっ、くっっっそおおおおっ!!
心が血の涙を流しながら叫んでいる。
しかしジョ・ジーヴはそんな私を横目でスッと見下ろし、冷酷な眼差しを向けて嘲笑う。
「励めよ”川波社員”。我らの
絶望を渦巻かすような黒い嗤い声を上げ、ジョ・ジーヴはSPたちに囲まれながら、総理室を後にした。
ガランと静まり返った部屋に一人残された私は、何とか起き上がり、”総理”の椅子に座る。
そして、組んだ両手を額に当て両肘を机につき、ギュッと目を閉じた。
───私は、これからどうしたらいいのだ……
しかし、いくら考えても答えは出ない。
代わりに、ジョ・ジーヴから告げられた話の内容とさっきの言葉が脳裏を駆け巡り告げてくる。
もう、どうにも出来ないことを。
───心で詫びるしかないのか……これから”滅ぼすよう命じられた、”日元国”の大切な国民たちに……!
そのまま動けずにいる中、窓から夕焼けの日が差してくる。
私にはその夕焼けの光が、まるで終末の世界の到来のように感じてしまった。
やはりもう、どうしようもないのかもしれない。
ジョ・ジーヴの権力はあまりにも絶大で、言葉通り、私など彼からしたらただの1社員にか過ぎないのだから。
けれどその瞬間、稲妻のように脳裏に蘇った。
私が総理になる前に演説していた時に起こった、とある事件が。
───違う。違うぞ! そうだ……私はあの時、あの少女に……!
私はスッと立ち上がって、窓から外を見つめた。
「舐めるなよ、ジョ・ジーヴ。国民たちに言ってたまるか。アイムソーリーなどど……!」
夕焼けの光が、終末から、私の内なる炎に変わっていく。
───国民たちに示すのは、アイムソーリーなどではない……『アイム総理』だ!
その決意を胸に、私は総理室を出て国会へと向かった。
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