第3話

 訓練場に行っても、二人の近くに人がよってくることはなかった。もちろん時間には間に合っているはずだし、最後に来たというわけでもないのだが、悲しいことにジニアが美しすぎたのだ。もちろんフィアルカも十分美しいのだが、その背の低さと髪の毛の短さで少年だと思われている上に俯いているから顔が見られることはない。ジニアがほとんどいない女性候補で近づきにくいこともその一因である。

「なんだ、あいつ。」

「姉弟なんじゃない?」

ささやき声が聞こえてくるが、もちろん事実にかすってすらない。会ったのは昨日だし、その時は自己紹介すらしていないのだ。

「孤立、したな。」

思わずつぶやく。苛立ちが募るばかりだが、喚くのも非建設的なのでただ傍観するだけだ。しばらく待っていると、白い紙の鳥がすーっと飛んで来た。燕くらいの大きさで、飛んでいる音はほぼしない。腕を出すと、鳥は降り立った。

『これから各種目を迅速にこなしてもらう。今話しているのは知っての通り君たちの肩付近にそれぞれいる、白い紙の鳥だ。魔法で作られたものだから、試験中に気にすることはない。より多くの人が受かることを期待しているよ。』

穏やかで心地よい女性の声が聞こえる。たくさんいる鳥からそれぞれ聞こえるというのがなんだか不思議な気がして、フィアルカは思わず口を緩めた。 

 フィアルカの始めの種目は、短距離走だった。距離は魔法騎士団でも変わらないのだな、と思ってしまう。短距離走はこの距離が大半だが、魔法騎士団ならきっとその倍はあるのではないか、と思ってしまう。スタートの近くに、合図を出す人がゴールの近くに、タイムを出す人がそれぞれ立っていた。変なところで原始的である。しかしこれは、どうやら不正を防ぐためのものらしい。魔法で計測すると、干渉を受けることもあるのだとか。

「用意、始め!」

掛け声と同時に走り出す。風が耳元で唸る。ゴールまではすぐだった。

「フィアルカ=ヴァイオレット、五秒四、〇…」

どうしてそんなに声が小さいのか、とその人を見ると、瞳には驚愕が浮かんでいた。そんなに遅かったのだろうか、このタイムは以前いたところでは一番だったのだが、と思わず不安になる。

「次の競技に行きなさい。」

すぐに立ち直ったのか、その人はフィアルカを促した。

 そしてフィアルカは、ほぼ毎回記録を測る人を驚かせることとなった。小さい上に手足も細いため、握力や腕力、投擲などの力が必要なものは平均程度だが、それ以外、つまり俊敏さを競うようなものでは世界記録に匹敵、またはそれを超えてしまう記録を打ち出していたのだ。

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